弁護士のアトリビュート
第405号 弁護士のアトリビュート
漫画家が、キャラクターを描き分けるのに苦労するという話を聞きました。
下手をすると、みんな同じような顔になってしまうそうです。そんな問題の簡単な解決方法は、髪の色や服装で、その人だけの特徴を出すことなんです。こういった「その人を特徴つけるもの」をアトリビュートと言います。これは、現代の漫画家だけではなく、古今東西使われている手法です。例えばキリスト教の宗教画では、様々な聖人が描かれていますが、はっきり言って、どれが誰なのかなんてわかりません。そこで登場するのがアトリビュートです。鍵を持っているおじさんなら、天国の鍵を預かった初代ローマ教皇聖ペテロだと分かります。本を持っていれば、福音書記聖ヨハネだといった具合です。こんなのは良いんですが、殉教した聖人の場合は、一気に趣味が悪くなります。車裂きの刑で殺された聖女カタリナは、車輪を持っています。そういえば以前トンカツ店が、包丁を持った豚の看板を作ったことで非難されたのを思い出しました。生きたまま皮膚を剥がされた聖バルトロマイは、自分の皮を持った姿で描かれます。ここまで趣味が悪いと、かえって感心しちゃうのです。キリスト教だけでなく、ギリシャ神話の神々もアトリビュートを持っています。ゼウスの雷とか、ポセイドンの三叉戟なんて有名です。中国の豪傑達にもアトリビュートは使われています。青龍偃月刀を持った武将なら、三国志の関羽です。全身に龍の入れ墨がある豪傑は、水滸伝の九紋龍史進といった具合です。現代日本の温泉では「タトゥーのある方は入湯お断り」と表示されていますが、間違いなく対象となりそうです。事程左様にアトリビュートは便利なんです。そういえば「文学」の場合はアトリビュート無しで人物を描き分ける必要があるそうです。一方、娯楽小説や漫画では、その労力を、ストーリーの面白さに向けられます。手塚治虫先生も「漫画の人物は記号だ」と喝破されていました。どちらが良いのかは難しいところですが、私は頑張って描き分けるよりも、アトリビュートを使えばいいと思います。もっとも、アトリビュートは便利なだけに、ほとんどの人は、そこしか見ないようです。私なんか、張飛が偃月刀を持っていたら、「これは関羽だ!」と即決してしまいます。おいおい。。。
推理小説の古典に「赤毛のレドメイン家」というのがあります。犯人は見事な赤毛で有名な人です。色々な所で目撃されます。しかし、本当は他人が赤毛のカツラを使って、犯人のフリをしていたという話です。「なんじゃそれは?」という気もしますが、読んでると引き込まれる名作推理小説です。アトリビュートは美術や文学だけの話ではありません。現代社会で一番重要なアトリビュートといえば、何と言ってもブランドでしょう。買う人が、本当に品質で選ぶ目を持っているなら良いのですが、ほとんどの消費者は私と同レベルなので、ブランドしか見ないで、有難がって買う人は相当数います。そんなわけで、ブランドを偽造して消費者を騙す事件が起こるわけです。これは重大事件として、損害賠償だけでなく刑事罰も課せられることがよくあります。というわけで、弁護士のアトリビュートですが、多分これは、弁護士バッチです。バッチを付けていれば、ほとんどの場合に弁護士と認めてもらえます。裁判所にも、バッチを見せれば、荷物検査など無しで入れてくれます。それだけにバッチの管理は厳しく要求されています。それぞれにシリアルナンバーが付いていて、どのバッチが悪用されたか分かってしまいます。紛失したらすぐに届け出ないといけませんし、凄く怒られてしまうのです。
弁護士より一言
「パパのアトリビュートって何だろう?」と娘に聞いたら、「いつもアクビをしていること」と言われました。し、失礼な! 妻からは「ふわふわ白髪のおじさんがいたから、パパだと思って近づいちゃった」と言われたんです。このままではいけないので、カッコ良いアトリビュートを考えたいと思うのです。常に六法全書を持ち歩いているなんてどうでしょうか。。。 (2026年1月16日 文責:大山 滋郎)





