わが友ヒットラー

第414号 わが友ヒットラー

「わが友ヒットラー」は、ヒットラーを批判する内容の、三島由紀夫の戯曲です。

普通はヒットラーの暴力性や全体主義を批判しますよね。しかし三島由紀夫は、そんな月並みなことはしない。ヒットラーが、自分よりさらに右寄りの友人を裏切ったことを批判しているのです。ヒットラーと、武闘派組織「突撃隊」のリーダーであるレームが主人公です。突撃隊というのはナチスの為に、暴力で政敵を黙らせる集団です。そんな突撃隊の指導者レームは、ヒットラーを「アドルフ」と呼び、心から自分の友達だと信じていました。しかし政権を奪取したヒットラーは、資本家や国軍等より多くの支持を得る必要があった。そこで、極端な暴力集団である突撃隊を切り捨てる決断をするわけです。ヒットラーは、自分に反抗してきた左翼勢力を切ると同時に、「友」であるレームを裏切って、突撃隊の力を奪います。劇の幕切れ、「友」を射殺させたヒットラーは、窓の外を眺めてこう呟きます。「右を叩き、左を叩く。政治は中道に行かなければならない」 この「中道」という言葉が、現代日本の政治を見ていると実に味わい深く感じられるのです。たとえば、「中道改革連合」だなんて、名前に「中道」を付けた政党ができました。

しかし彼らが本気で権力を掴む気があるのか、疑問に感じてしまいます。彼らの足元を見れば、ヒットラーの「突撃隊」ともいうべき、「しばき隊」のような過激な支持層がいます。こんな人たちがいたら、広く国民から支持されることは難しいはずですが、「中道」改革連合は、そういう過激な支持者を切り離せずにいる。それと比べて高市首相からは、強い決断力を感じました。選挙で大勝した後に、「国民会議」だなんて作りましたよね。その中には左翼勢力を入れないだけでなく、参政党のような、基本的に高市さんを支持していた勢力も排除した。右と左の両極を叩き落として、自分だけ中道に居座るとは、まるでヒットラーの様に凄い人だなと、感心しちゃいました。(褒めているのか、けなしているのか分かりませんが。。。) 

弁護士として企業の法務に関与していると、似たようなことがあると感じます。創業期を支えた「コンプライアンス無視の猛烈社員」みたいな人って、多くの会社に居ました。創業者を親友と思い、会社のためには死んでも良いと思っているような人たちです。しかし、会社が大きくなり組織化が進む中で、こういう人のセクハラ・パワハラなどの問題が顕在化してきます。経営者が健全な「中道経営」を目指そうとすれば、切り捨てなければならない瞬間が必ず訪れます。しかし、「わが友」との情を断ち切れずに禍根を残す創業者は相当数いるようです。「あいつは口は悪いが、昔から会社を支えてくれていたんだ」 などと言って「レーム」を放置した組織は、やがてその過激さに引きずられ、痛い目にあいます。問題がどうにもならないくらい大きくなってから、弁護士に依頼が来て、「レーム」を切り捨てることになったりするのです。などと偉そうなことを書いていますが、私自身がレームの立場になったこともありました。

以前、親族間で激しく争っている方からの依頼を受けました。依頼者の熱意に応え、まさに依頼者の「突撃隊」として戦ったことがありました。ところが最終局面に差し掛かったとき、依頼者は突然、相手方である親族と仲直りしたのです。そして、「先生の対応は強引すぎて、親族の絆を壊しかねない」という理由で解任されてしまいました。

かつてヒットラーが、突撃隊のレームを射殺したように、私もまた切り捨てられたわけです。ただ、劇の中のヒットラーも、「友」であるレームを救うために「考えを変えないといけない」と、様々なアドバイスをしていました。私もかつては「友」であった依頼者からのアドバイスを、心ならずも聞き逃していたのではと、今になって反省するのでした。

 

弁護士より一言

「友達に裏切られたことはないよ」と家族に自慢したところ、娘に言われたのです。「そもそもパパって、友達いないじゃん」 自分でもうすうすそう思っていましたが、娘に言われるとショックです。「親友」だと思っていた娘に、裏切られた気がしたのでした。。。                                                                                     (2026年6月1日  文責:大山 滋郎)

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