シャーロッキアンの憲法解釈

第198号 シャーロッキアンの憲法解釈

シャーロキッアンというのは、名探偵シャーロック・ホームズは実在したと信じている人たちです。コナン・ドイルが書いた小説の主人公ではなく、親友のワトスン博士が記録を残した本物の名探偵というわけです。ホームズの探偵小説は全部で9冊(「聖典」と呼ばれてます!)あるんですが、その中には必ずしも良く分からない箇所があります。常識的には、作者のコナン・ドイルがうっかり間違えたんだろうと考えざるを得ない箇所ですね。しかし、そんな風に考えるようでは、シャーロッキアン失格です。聖典の中に、一見矛盾するような箇所があっても、そこには必ず意味があると信じて、「正しい」解釈を考えていきます。例えば、ワトスン博士の名前の問題なんか有名です。博士の名前は、ジョン・ワトスンですが、小説の中で奥さんが博士を「ジェームス」と呼ぶ場面があります。シャーロッキアンではない普通の人なら、「コナン・ ドイル、うっかり間違えちゃったんだな。出版社も、もっと注意してあげればよいのに。」なんて考えて終わりですよね。誤植なんだから、気が付いたら訂正すれば良いだろうなんて言う人もいそうです。しかし、シャーロッキアンは、「聖典」に間違いがあるなんてことは認めません。こういった問題につい て、納得のいく解釈を作り出していくのです!

私の見解では、弁護士その他法律家は、「シャーロッ キアン」なんです! 矛盾していたり、つじつまが合 わない法律に関しても、間違いだなんて認めずに、合理的な解釈を見つけていきます。民法なんか、130年も前に作られた法律ですから、現代の取引状況と合わなくなってくるのも当然です。それでも、法律は極力変えないで、「解釈」で乗り切っていくわけです。「よくもまあ、こんな解釈考えつくな。本当に頭いいな あ。」と感心する一方、シャーロッキアンに対するのと同じ感想を持ちます。「これって、遊びだろう!」 憲法なんてもっと凄いんです。9条の戦争放棄条項なんて、特に有名ですね。日本は戦争を放棄すると規定する一方で、そこにわざわざ「国際紛争を解決する手段としては」と限定をつけています。それなら、「自衛」のための戦争は良いのかなと思ってしまいそうですが、一方憲法は「戦力」をすべて禁じています。「戦力なしで、どうやって自衛するんだよ?」と、普通の人には非常に分かりにくい規定なのです。 これなんかも、憲法を作る過程で、多くの人の思惑が入り乱れて、今ある文言になったのだというのが、常識的な見解です。でも、日本の法律家の多数派は「シャーロッキアン」ですから、そんな「コナン・ドイル の都合で。。。」なんてことは認めないんです。憲法という「聖典」の隠された深い意図を解釈していきます。9条だけでなくて、憲法にはこういう常識的にはおか しい条文って、いくつも有ります。たとえば、私立学校への補助の問題も有名です。条文を普通に読めば、明らかに憲法で禁止されているんですが、本当に禁止しちゃったら、非常識な結果になります。だからとい って「聖典」が間違っていましたと認めることは、「シャーロッキアン」としては許しがたい。そこで、常識的には憲法違反としか読めない私学補助が、何故憲法上許されているのかについて、頭の良い学者先生達がこぞって、いろいろな解釈を考えています。 これは本当に意味のある事なのか、「シャーロッキア ン」でない私は、疑問を感じざるを得ないのです。

 

弁護士より一言

私自身、せっかちで書き間違えや誤植が非常に多い のです。ニュースレターでも、恥ずかしながら何回も指摘を受けています。さらに、レターを小冊子にまとめるときには、横書きを縦書きにすることもあり、自分でも驚くほど多くの誤植が出てきちゃうんですね。おおざっぱすぎる次女にまで、「パパこれ酷すぎない?」なんて言われました。

私のニュースレターの誤植も、間違いではなくて、深い意味が隠されているのでは?と皆さんに信じて貰えるように、頑張ってまいります。(頑張るところが違うような。。。)(2017年6月1日発行)

 

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