弁護士殺し 金の地獄

第207号 弁護士殺し 金の地獄

「女殺 油地獄(おんなごろし あぶらのじごく)」は、近松門左衛門の代表作です。子供の頃にこの題名を見て、「一体どんな凄い話なんだろう?」と感動したのを、今でもよく覚えています。甘やかされて育った油屋の若旦那が、放蕩の末、勘当されます。その後、親切にしてくれていた、別の油屋のおかみさんを、遊ぶ金欲しさに殺すという話なんです。お金が人を狂わせるということですが、これは現代でも同じでしょう。さらにお金は、人を狂わせるだけでなく、法制度や道徳までも狂わせていると思うのです。

 

うちの事務所では刑事事件を多数扱っていますが、お金のおかげで刑罰を受けずに済む事案なんて、本当に沢山あるんです。しっかりとした弁護士を付けるかどうかで、刑罰が変わってくることはよくあります。もちろん、弁護士には相当の費用が掛かります。(す、済みません。。。でも、お金貰わないと、活動できないんです。) 性犯罪なんて、最近刑罰がとても重くなってきています。そういう中で、被害者に相当のお金を支払い、許して貰えば刑罰を受けずに済むことが多々あります。同じような犯罪をしても、お金があるか否かで、本当に大きな違いがあるんです。

もっとも、こういう形でお金が司法に影響を及ぼしていることについて、多くの方は否定的にとらえているでしょう。その一方、お金による影響について、法律家も一般の人も、当然認められていると考えていることもあります。電車で、お年寄りや身体の不自由な人に席を譲るというのが、日本で認められている道徳ですよね。しかし、指定席の場合には、席を譲らなくてもよいというのもまた、一般的な道徳観念です。これなんかも私には不思議に思えます。今後、一般の電車

でも、席に座る場合は数百円の別料金を支払うなんて制度になったら、「電車でお年寄りに席を譲る」なんて道徳は、消滅してしまうんでしょうか。。。

 

結婚している男性が、妻以外の女性と性的関係をもつと、不貞行為ということで、損害賠償責任が生じますね。このとき、相手の女性に対しても、損害賠償が認められるというのが、日本の法制度です。浮気した夫だけでなく、浮気相手の女性からも、賠償金をとれるのです。ところが、この原則には例外があるんです。相手の女性が、風俗関係の、お金でやり取りするプロの女性の場合には、責任を問われないことになっています。これは、六法にも、法律書にも書いてないことなんですけど、なぜか当然のこととして受け止められています。なぜそうなるのか、疑問に思う法律家は、私くらいかもしれません。そもそも一般の人も、裁判所と同じ考えのようです。特殊浴場の女性が、不貞行為の責任を追及されたなんて、聞いたことがないです。お金が絡むと、責任免除になるんです。

その一方、特殊浴場の女性が避妊せずに客の子供を産んでも、客の子供として認知されなかったはずです。以前はDNAの技術など発達してなかったこともありますが、それだけではないように思います。家族法のどこにもそんな記載はありませんが、お金を介する性的関係の場合は、家族法も事実上適用外だという共通認識があるように思えます。DNA鑑定技術が進歩し、子供の人権が強く主張されている現代で、こういった常識がいつまで認められるのか、気になりますね。風俗のプロが客を騙して子供を作った場合、その子供にも客の相続権が認められるかもしれません。 いずれにしても、お金は法制度に影響を与えます。法律の世界も、「金が仇の世の中」なのです!

弁護士より一言

息子が声変わりして、しばらくの間は、低い声で話しかけられると、「ど、どちら様でしょう?」なんて一瞬とまどってしまいました。しかし、話の内容は本当の子供っぽいのです。「今日のご飯なに?」と毎日聞いてきて、食べ始めると、「めちゃウマ。うまうま警報発令中!」なんて、喜んで声を上げてます。いずれ近いうちに、話の内容も、大人のようになるのかなと思うと、少し残念に感じるのです。(2017年10月16日発行 大山滋郎)

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