弁護士の「友達」

弁護士の「友達」

前回のニュースレターで、コンピューターによる統計的・機械的な判断が発達すれば、弁護士などいらなくなるのではと書きました。書いていて、自分でも怖くなってきたんです。そんなわけで今後、弁護士として生き残っていくにはどうすれば良いのか、真剣に考えてみることにしました。

そこで思い出したのが、かつて話を伺った、司法書士のスゴイ先生です。

私は、活躍している人の話を聞かせてもらうのが趣味なんですね。その方は、私よりもはるかに若いのですが、事務所をとても大きくして、大活躍しています。
それでいてとても腰が低くて、私などにも非常に親切に、いろいろと教えてくれました。
 
その先生は司法書士になる前、いろいろな仕事をしていました。新聞の勧誘員もやったそうです。何となく、新聞勧誘員って、悪いイメージがありますよね。押し売りみたいにして、無理やり契約を取るといった感じです。
ところが、その人は勧誘員としてトップの成績
を収めたといいます。「一体どうすれば、そんなに契約してもらえるんですか?」と質問したときの、彼の回答に感動しました。「新聞を売ろうなんて考えるからダメなんですよ。家の人のところをこまめに回って、『友達』になれば良いんです。友達にさえなれば、新聞も取ってくれるし、お隣さんにも紹介して貰えますよ。」「私が弁護士なら、経営者の方をはじめ、多くの人と『友達』になりますね。それさえできれば、仕事なんか幾らでも来るはずです。」
 
これを聞いて、心から感動しました! それと同時に、「こんな凄い人が同業者でなくて本当に良かったな。」と、心からホッとしたのです。(な、情けない。。。)
何にしましても、コンピューターの統計的判断がいくら進化しても、人間の弁護士は依頼者の「友達」となることで乗り切れるなと思ったのです! と、ここで止めとけば良い話なんですが、私の場合無駄に教養?があるのです。「友達」と言いますと、安部公房の戯曲「友達」を思い出して、妄想が止まらなくなります。
 
1人暮らしの男の家に、3世代の大家族が、「友達」として乗り込んでいきます。「夜の都会は 糸のちぎれた首飾り」なので、あちこちに飛び散った「孤独」な人間という玉を、家族という首飾りの糸に通して、「友達」にしてあげようという、「善意」の人たちです。無理やり押しかけてくる「友達」大家族の「善意」に押しつぶされた主人公が、最後に死んでいく話です。
私が生まれた頃に作られた戯曲ですが、傑作の名
に相応しく、まだまだ古びていない気がします。

弁護士でも、同じような話を聞いたことがあります。
ある被疑者が逮捕されたんですが、冤罪の疑いがあると弁護士達は考えました。そこで、弁護士会の有志たちが何人も集まって、その人が「孤独」のあまり不当な捜査に屈しないよう様に、協力して毎日面会に行きました。ところが、その被疑者はあとから、「弁護士が毎日毎日押しかけてきて、本当に迷惑した。一人で静かにして欲しかったのに。」と言っていたそうです。
ある程度おせっかいじゃないと「友達」なんてできません。その一方、無理やりやってくる「友達」に対して「何度も来られて煩いなあ。」と思う人は相当数いるはずです。腰が引けていては「友達」になんかなれないが、やりすぎると安部公房の「友達」みたいになってしまう。これからの弁護士として、是非とも友達道 (なんだそりゃ?)を極めたいと思ったのでした!
 

弁護士より一言

年をとればとるほど、新しい「友達」をつくるのは難しくなりますよね。そこで、寮生活している中学2年の娘に、メル友になってもらいました。
「元気に出発した? 帰ったら、カラオケ大会しようね!」「切なく出発しました。」「カラオケ、練習しとくよ。」「それじゃこっちも練習しとくよ。」「勝負だね!」「パパの歌、本当に面白いよね。」「パパの顔には負けるでしょ!」「今電車の中だから、笑わせないでよ。」「笑う華道は服を着るだよ!」「なにそれ?」
あとどれだけ娘とメル友でいられるのだろうかと、少ししんみりしているのです。
 
(2016年2月16日発行 第167号)
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