弁護士の小言
第223号 弁護士の小言
「みんな大好きだけど、大嫌いなものは何?」というナゾナゾがあるそうです。分かりますか? 正解は「小言」だそうです。私も小言を言われるのは大嫌いですが、他人には喜んで言っちゃいます。(おいおい。。。) 飲み屋さんに行くと、「親父の小言」というのを額に入れて飾っている店がよくあります。小言を聞くのは嫌いなので、今までは読みませんでした。しかし、「小言を言うときの参考になるか!」と思いつき、先日初めて目を通してみたのです。(さ、最低じゃん。)でも、とても良いことが書いてあったのです。
「大飯は食うな。」なんて、いつも調子乗って食べ過ぎている私には耳が痛い。気を付けますです。。。「子の言うことは八九聞くな。」という「小言」もありました。子供の頃は、この小言の良さが分からなかったでしょうが、今になると本当によく分かります。
息子から「アイフォンを買ってよ。クラスの中で持ってないのは、私だけ」なんて言われて、フラフラと買い与えていた、昔の自分に教えてやりたいです。
「判事はきつく断れ。」というのもありました。「裁判官にはなるな。弁護士の方が良いよ。」という意味かと思ったら違いました。(あ、あほか!) 裁判沙汰になるようなことは決してするなということで、具体的には、「保証人にはなるな!」ということだそうです。これって、確かにとても大切な教訓なんですね。私も子供達には、しっかりと伝えようと思います。もっとも、うちの依頼者が債権を持っている場合には、「債務者から、何が何でも保証人を取りましょう。」なんて、アドバイスしています。す、済みません。
この他にも、本当に良い「小言」が沢山あるんですね。
「小商いは値切るな。」は、とても好きな「小言」です。もっとも、蚤の市などで値切るのが大好きな妻に、この「小言」を教えたら、「この交渉が楽しいんだよ! 分かってないねぇ。」と言われてしまいました。
というわけで、「弁護士の小言」です。私も、事務所の若手弁護士達に、ついつい小言を言ってしまいます。冷静に考えれば、若手弁護士達は、同じ位の年齢のときの私より、2-3割は優れています。それでも、年長者として「小言」をいうのも義務だと思うのです。新人弁護士に対して必ず言う小言はこんな感じです。
「仕事は60点の出来で良いから、早くすること。」
仕事が遅い人は、内容的にも大したことないと信じています。特に新人の頃は、どうせ大したもの出てこないんですから、せめてはやく出すようにと指導しちゃいます。「納期は絶対に守ること。」なんて小言も、いつも言っていますね。大体弁護士は、裁判所に提出する書類でも、納期を守らないで平気な人が沢山います。また、それでも通用しちゃう業界の体質があるんです。
しかし、「そんなことは世間じゃ通用しないよ」と、かなり厳しく小言を言うことにしています。大体、納期というのは、試験の制限時間と一緒です。弁護士になるまでに、さんざん試験を受けてきた中で、制限時間を過ぎてから答案を出したことなんかないでしょう。仕事も同じことです! さらに、私の一番よく言う「小言」はこれです。「用件がなければ、何か用件を作ってでも、依頼者に頻繁に連絡すること。」 どんな事件でもそうですが、特に刑事事件の場合など、依頼者の方はとても心配されているんですね。でも、なんとなく弁護士に対して遠慮があって、「現状どうなっているか教えて下さい。」とは言い辛いのです。大した用件は無くても、こまめに連絡して安心してもらう、それも弁護士の大切な仕事だと思うのです。
弁護士より一言
親父の小言」の中に、「女房は早く持て。」というのがありました。この小言の意味がずっと分からなかったんです。とこ
ろで私は、今でも母からいろいろとお小言を貰います。さらに母は、妻に向かって、
「滋郎はなにか忠告すると短気ですぐ怒るけど、懲りないでしっかり注意してやってね。」と、引継?までしたそうです。そんなこと、引き継がないでいいよ!
なるほど、小言の継承のために女房を早く持たせるのだなと、思ったのでした。
(2018年6月18日発行 大山滋郎)