何が弁護士を食べているのか

第261号 何が弁護士を食べているのか

 「What’s eating Gilbert Grape?」は、かなり前の米国映画です。直訳すると、「何がギルバート・グレイプを食べているか?」になります。「悩み事は人を食べてしまう。」ということから、「何を悩んでいるのか?」という意味になるんです。アメリカの田舎町で暮らす家族の話です。父親が自殺した後、母親は過食で、動けないほど太ってしまう。そんな家族を支えて行こうとするお兄さんを、若き日のジョニー・デップが好演します。高いところが好きで、直ぐに給水塔に登ってしまう、知的障害がある弟を演じるのがディカプリオ。二人とも本当に上手い!

 

 ということで、今回は、何が弁護士を悩ませるのかという話です。ただ、考えてみますと、私も結構小さなことを気にすることがあります。減量中にファミレスでステーキ定食を頼んだとき、ウエイトレスさんに「ご飯はいいです。」って伝えたんです。そうしたらかなり強く「代金は引けませんから。」と返されました。「別に代金を引いてもらおうなんて少しも思ってなかったのに。」と、落ち込んだのです。それがトラウマになって、その後は食べられないときにも、取り敢えず注文して残すようにしています。(どんだけ気持ちが弱いんや。。。) そんなわけですから、弁護士の仕事をしていると、何かと悩みます。特に、独立したばかりで、自分一人で対応していたときなんて、「何か見落としているのでは?」なんて、凄く気になったものです。夜中に、ミスをした夢を見て飛び起きることもしょっちゅうでした。

 

 しかし、弁護士を悩ませるのは、なんといっても人との関係です。裁判官の中にも、話が通じない人はいます。そういう人は、他の弁護士の間でも、問題裁判官として有名になったりするんです。そういう裁判官にあたると、弁護士としても気が滅入るんですね。以前、「決められない裁判官」にあたったことが有ります。当方も相手の弁護士も、「もう和解はムリだから、早く判決出して下さい。」と言っているのに、「でも、納得しないと、控訴するでしょう」なんて言いながら、いつまでもいつまでも和解交渉を続けさせます。どうすれば良いのかと相当悩みましたが、相手方の弁護士とは、「あの裁判官、頭おかしいよね!」なんて話して、仲良くなっちゃいました。まあ、裁判官が変な人でも、それほど悩むことはありません。一方、お客様とのやり取りでは、かなり落ち込むことがあります。特に、依頼者との信頼関係が取れていないと分かると、相当悩みます。事件の中には、どうやっても勝てないものがあります。それでも、争って欲しいと言われると、やらざるを得ない場合もあるのです。

 

 当方としては、その辺を十分に説明した上で対応しているつもりでいても、後から「他の弁護士に聞いたら、絶対に勝てると言われました。」なんて苦情が来ることもあります。こういうのは、「全然信頼されてなかったのか。。。」とかなり落ち込みます。「それなら他の弁護士に頼んでください!」と言いたくなっちゃうのです。法律相談でも、凄い人が来ます。兄弟間の相続問題で、どちらか一方が、親を人質にとってしまうことはよくあるんです。他の兄弟には親に会わせないようにして、財産を自分たちに移転します。更に、自分の方に全ての財産を残すといった遺言まで作らせます。これで親が亡くなったときに、他の兄弟から遺留分(法律で認められている相続分)を要求された人が、相談に来ました。「これは勝てませんよ」といったところ、「親の意思である遺言に逆らうとは、公序良俗の人権侵害でしょう! そんな違法を許さず、最後まで闘ってくれると信じていたのに残念です。」 
そ、そんなアホな主張が通るか!と思いながらも、そう言われると気持ちは落ち込むのでした。

 

弁護士より一言

 「最近とても忙しい。」と、家族に愚痴を言ったところ、高校生の娘が、「私に比べればずっといいよ。」と言い返してきたんです。「パパは忙しい分だけお金を貰えるでしょう! 私はどんなに忙しくても、無給なんだもん(笑)」 あまりにアホな主張に言葉をなくしました。しかし、悩み事にくわれたりせずに、いつも楽しそうな娘にほっとするのでした。。。

                                        (2020年1月17日 大山 滋郎)

 

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