美女と野獣の和解

第267号 美女と野獣の和解

「Beauty and the Beast」は、ディズニーのミュージカルで有名です。イケメンで頭も良いが、人を見下した、性格の悪い王子様がいました。魔法使いの怒りに触れた王子様は、字を読むこともできない野獣に変えられてしまいます。そして、野獣となった王子を、本当に愛してくれる女性が現れるまで、この呪いは解けないのです。長い年月の後、美しい村娘が野獣の元にやってきます。はじめは野獣のことを怖がっていた娘も、段々と普通に接するようになります。本を読めない野獣に、話しを聞かせたりします。そして最後に娘が、命を懸けて自分のことを守った野獣を愛したことで、魔法使いの呪いが解けます。王子様に戻った野獣と、娘が結婚することで、ミュージカルは終わります。 私なんか、「アメリカで2回、日本で1回見に行きました!」と、思わず?自慢したくなるくらい、楽しいミュージカルです。しかしながら、このミュージカルを見た後で、その後の王子様と村娘の将来を心配してしまったのも事実なのです。この王子様は、もともとイケメンで頭も切れるが、性格の悪い人でした。最初のころはともかく、いずれは「教養も家柄もない、野暮ったい田舎娘と結婚するなんて、オレもどうかしていたな。」と思うに決まっていると、イケメンに恨みを抱いている私は思うのです。(おいおい。。。)

 

「おとぎ話・大衆小説」と「文学」の違いについて、読んだことがあります。「おとぎ話は結婚で終わる。文学は結婚から始まる。」のだそうです。なるほどと思いましたね。「王子様と結婚して、幸せに暮らしました。」というのは、おとぎ話の世界だけなんです。現実世界に生きる「人間」を書く「文学」になると、「結婚後の世界」を描きたくなるのでしょう。イケメン王子に戻った野獣のその後を見てみたい気がするのは、よく理解できます。

 

実は、ディズニーの美女と野獣には原作があります。原作では、野獣は元の王子様に戻りません。ご丁寧に、解説付きだったように記憶しています。「野獣が元に戻ったときにどうなるかは分からない。うまくいくかもしれないし、破局するかもしれない。それよりも、野獣のままの王子と一緒になった方が良いのだ。」みたいな内容だったはずです。イケメン王子に戻った野獣が、そのまま誠実な人だったら、「完全勝利」といえます。

 

しかし、元の性格の悪い王子になるかもしれません。それを思えば、野獣のままの相手と結婚する方が良いのでしょう。
民事裁判の進め方で、弁護士に対しての不満を聞いたことがあります。「せっかく裁判を起こしたのに、最後になって弁護士が和解を勧めてきた。」という不満です。依頼者の立場からしたら納得できないのはよく分かります。その一方、弁護士としては、判決まで行ったときのリスクを考えてしまいます。判決の場合、基本的に勝か負けるかのいずれかになります。100点か0点か、どちらかになるわけです。さらに、仮に勝訴できても、相手は不服で控訴してくるかもしれません。それによって、さらに時間と費用が掛かります。また、勝訴判決が確定しても、相手が従わないときには、強制執行の手続きが別途必要になります。

 

こういうもろもろのリスクを考えると、「お互い50点ずつで手を打とう」という和解を選びたくなってくるのです。ということで、何が言いたいかといいますと、「判決」というのは、野獣を王子様に戻してみる行為だと思い至ったのです。仮に私が、野獣との結婚に関して娘から相談を受けたら、「判決」を避けて「和解」を勧めそうです。「イケメン王子に戻した(判決まで行った)ら、不幸になる可能性が十分あります。物足りないかもしれませんが、野獣の王子と結婚ということで和解した方がいいと思います。」

 

弁護士より一言

大学生の長女は、ラインでのやりとりでは良い子なんです。思いやりのある言葉や、楽しいスタンプを送ってくれます。ところが、現実に会って話をすると、とても不愛想です。父親として大変心を痛めて、妻と他の子供たちに相談したところ、言われちゃいました。「ギャップ一位はパパじゃん!」私はメールでは「元気かな?」「早く会いたいな♡」などと送るわりに、実際に会うと、特に嬉しそうでもなくブスッとしているんだそうです。ほ、本当ですか。。。心優しい「野獣」のように、いつも機嫌良くしていようと、心に誓ったのでした。                                        (2020年4月16日 大山滋郎)

 

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