いきなり弁護士

第294号 いきなり弁護士

「酒池肉林」って言葉がありますよね。古代中国の暴君が、人々の犠牲の上に、信じられないような贅沢な生活をしたという話です。「酒池」というのは、文字通り酒の池です。お酒という最高に贅沢なもので池を作り、飲み放題としたのが酒池です。それでは「肉林」は何かと言いますと、現代人が誤解している内容とは違います。当時の庶民が、ほとんど口にできない「肉」を焼いて、林の枝々に刺して、食べ放題の状態にしたのが「肉林」です。これが、昔の人の考えた、羨むべき最高の贅沢だったわけです。

 

今で言いますと、牛角の焼肉食べ放題3480円コースに、90分飲み放題1480円を付ければ、誰でも「酒池肉林」を味わえるのです! 現代では、焼肉に対して、それほど思い入れがないですよね。うちの子供達なんか、ステーキより、カップ麺の方が好きです。とまあ、前置きが長くなりましたが、数年前に「いきなり!ステーキ」というレストランが出てきたときに、「ステーキなんか珍しくもない。こんなの流行る訳ないじゃん」と思ったものです。予想は大きく外れて、いきなりステーキは大ヒットしました。その理由を考えたところ、これは「ステーキ」が流行ったのではない、「いきなり」の方に、お客様が惹きつけられたのだと確信したのです。(ほ、ホントかよ。。。) 「面倒な前置きはスキップして、用件だけ」みたいな感じが良かったのではということです。スピーチなんか頼まれると、前置きが長い人いますよね。「本日は大変お日柄も・・」なんてところから始まり、「諸先輩方のいる中で、私のような若輩者が・・」と謙遜して、話しが少しも始まらないのです。「いきなり本題を話してくれ!」と言いたくなります。ということで、弁護士の仕事です。

 

離婚や遺産分割事件の場合、最初は裁判ではなく、調停から入ります。まずは話し合いで解決してくださいというのが法律の趣旨なんですね。そうは言いましても、これはどう考えても話し合いではまとまらないという事件もあります。それなのに、延々と調停を続ける調停委員も居ます。「いきなり調停不成立」にしてくれ!と、強く思ってしまうのです。

 

もっとも、反対の例もあります。「これは勝てないな」と分かっていても、裁判所での話し合いを期待して、訴訟提起する場合があります。そういう意図を汲み取って、丁寧に話し合いを進めてくれる裁判官も居ます。しかし、そんな事お構いなしに、「いきなり敗訴判決」を出すような人も居るのです。や、止めてください。。。 

 

当事者の紛争に、どの段階で弁護士が入っていくのかというのも、悩ましい問題です。一般的に、いきなり弁護士を入れたりすると、相手方の態度も硬化して、まとまる話もまとまらなくなります。

 

その一方、クレーマーのように相手の話を聞かない人の場合、時間をかけて対応しても解決しないので、やむを得ず弁護士を入れます。こういう場合でも、ほとんどのクレーマーが非難してきます。「いきなり弁護士を入れやがって!」
世間一般で、「弁護士は偉そうで、もったいぶっている」と思われているようです。「電話しても事務員さんにばかり繋がり、弁護士は全く連絡が取れない」なんて不満を未だに聞きます。そこでうちの事務所では、担当弁護士の携帯番号を教えて、「いきなり弁護士」で対応することにして、お客様に喜んでもらえました。

 

もっとも、一世を風靡した「いきなり!ステーキ」も、現在苦戦しているそうです。うちの事務所でも、「いきなり」だけで満足しないで、お客様に評価される対応を、常に考えていきたいと思ったのです。

 

弁護士より一言

コロナが始まる前、事務所を抜け出して落語を聞きに行ったことがあります。カバンを置いたままいきなり居なくなり、携帯も通じないということで、事務所の若手弁護士達がとても心配していたと、後から聞きました。倒れているのではと思って、トイレまで探しに行ったそうで、「今後、いきなり居なくなるのは止めよう」と、心から反省したのです。
で、でも、人のことを徘徊老人みたいに心配しなくても良いのではと、少しだけ思ったのでした。

                                                                                                                         (2021年6月1日 大山 滋郎)

 

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