示談弁護士(2)
示談弁護士(2)
前回は、示談のポイントは韓非子の説難編にありということで終わりました。説難編というのは、読んで字のごとく、「説」得するのは「難」しいということが書いてあるんですね。またまた記憶で書いているので間違ってたら済みませんが(調べろよ!)、人を説得するためのポイントは2つあります。1つは相手を知ることで、もう1つは自分を知ることです。
相手を知るというのは、説得する相手が何を欲しがっているのかを理解することです。韓非子大先生は、君主に対して政策を売り込む場合について説明しています。
たとえば、口では正義を唱えているが、本心では利益のことしか考えていない君主がいます。そういう君主に対して、正義に基づく政策はこうですよと説得した場合、表面は聞く振りをするけれど、実際は相手にされないことになる。だからといって、そういう君主に、こうすれば利益になりますよと説得した場合、後からこっそりその政策を使われることはあっても、表面上は「とんでもないことを言う奴だ。」と追い払われてしまう。とまあ、こんなことを説明していたはずです。
示談交渉の場合、当方が用意しているのは、「反省・お詫び・誠意」と、「賠償金」の2つなんですね。この2つを、どのように組み合わせて被害者側と話すのか、非常に悩ましいところです。
会っていきなり、「100万円支払います。」と言った場合、「そんなにくれるの、悪いねえ。」と、素直に喜んでくれる人もいますが、「お金の問題じゃないんだ!」と怒る人の方が多数派ですね。だからといって、「誠意」だけ語っても、話しはなかなか前に進みません。
被害者の気持ちや人となりを考えて、どの様に話を進めるかというのは、本当に難しいのです。
もう1つのポイント、説得には自分自身を知る必要があるという点ですが、韓非子は次の例を上げています。
金持ちの家の塀が壊れていたんですね。それを見たその家の息子が、「このままでは盗賊が来るから、修理すべきだ。」と注意した。その夜、修理前に盗賊が来たんですが、皆はその息子が賢いと感心したわけです。ところが、同じ状況で、旅の男が同じことを言った場合、皆はその男が盗賊ではないかと疑ったという、大変ありがたいお話しです。同じことでも、言う人が違うと、違うように受け取られるわけです。
何が言いたいかというと、被害者の多くは、弁護士の言うことなど信じないということなのです。「示談して終わらせれば、これ以上検察に呼ばれて、話しを聞かれることもありませんよ。」「この金額なら、相場よりも相当高いですよ。」と私が言っても、「うまいことを言って、言いくるめようとしているな。」と警戒されるのがおちなのですね。ううう。。。
それなら、誰の言うことなら信じるのかと言いますと、これはもう(悔しいのですが)警察官や検察官の言うことなんです。そうしますと、説得のポイントは、警察や検察にどう口添えしてもらえるかにも係ってきます。
その辺のところは、また次回で説明いたしましょう。
弁護士より一言
私は大学生の頃、将棋部にいました。はっきりいって弱かったんですが、その当時はコンピューターに負けるなんて考えてもみませんでした。
「2001年宇宙の旅」に、HAL9000というコンピューターが出てきて、主人公とチェスをする場面がありますよね。このコンピューター、メチャクチャ強いんですが、圧勝したくせに、「いい対局だったね」なんて言うんです。これはムカッときます。
最近はコンピューターの将棋も強くなりました。私なんかめったに勝てません。
たまに勝てるときは、「このままじわじわといたぶってやろう。」なんて思うのですが、相手はあっさり投了してしまいます。せめて負けるときは、悔しそうにジタバタしてくれないと、こっちも張り合いが無いじゃないですか。
これからの将棋ソフトは、ただ強いだけじゃなくて、対局者を良い気分にさせることも考えて欲しいと思ったのでした。
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