ギデオン弁護士のラッパ

ギデオン弁護士のラッパ

ギデオンというのは、旧約聖書に出てくる英雄です。
英雄だけど、本当に平凡な人間なんですね。この平凡なギデオンを神が選んで、虐げられていたイスラエルの民の為に、反撃のラッパを吹かせたという話です。
ごく普通のつまらない人間が、神の力で偉大なことを成し遂げるという話です。

アメリカの法律を勉強した人にとっては有名は、「ギデオン対ウェンライト事件」というのがあります。
50年以上前の、丁度私が生まれた頃の事件です。
ギデオン君は、何度も泥棒を繰り返す、チンピラでした。逮捕されたギデオンは、素直に罪を認めないで、かえってゴネたんですね。
「自分はお金がないが、だからと言って弁護士をつけられないのはおかしい。当然弁護士をつけるべきだ」と主張したんですね。常識的には、盗人猛々しい主張でしょう。しかし、この主張がもとになって、アメリカではお金が無い人でも、当然に弁護士に依頼することが権利として認められたわけです。
この事件について、「ギデオンのラッパ」なんて本まで出版されました。神が、チンピラのギデオンを選んで、ラッパを吹かせたことにより、貧しい人でも弁護士を選任できる権利が生じたということです。この「ギデオンのラッパ」は、アメリカの司法制度を考える場合に、とても大切だと思うのです。

日本では、アメリカの司法制度は、非常に人気がないですよね。弁護士でも、批判している人が沢山います。たとえば、マクドナルドの火傷裁判なんて、悪名高いものがあります。注文したコーヒーで火傷したお婆さんが、「コーヒーが熱すぎたのが原因だ。」と主張してマックを訴えた事件です。米国の陪審裁判では、億単位の賠償が認められました。こんなのおかしいだろうというのが、弁護士を含む日本人の意見だと思います。正直、私もおかしいと思っちゃいます。しかし、こういう判決が出ると、熱いコーヒーやスープを提供するレストラン等が、非常に気をつけるようになることも間違いないと思うのです。

先日、小学校3年の息子がサービスエリアのセルフのレストランで炒飯についてたスープを自分の胸にこぼしてしまいました。妻がすぐに水をかけ、その後も氷や水でずいぶん冷やしましたが、思っていたよりずっと酷く、広範囲に火傷を負いました。半年以上たった今でも、まだ跡が消えません。私はレストランを訴えたりしませんが、「そこまで酷い火傷をするほど熱いスープにするなよ!」と、憤りを感じたのです。
日本でも、アメリカの様に、こういうレストランを訴えたらどうなるかということです。それによって、非常に高額な損害賠償が認められた場合です。ほとんどすべてのレストランで、火傷するほど熱いものは出さなくなるでしょう。もしそうなっていたら、うちの息子のような事故もなくなるはずです。

日本では、米国司法制度の評判は悪いのです。弁護士の中にも、日本がアメリカの様な司法制度になったら、この世は地獄になると言う人さえいます。確かに、米国の私法には大きな問題があると私も思います。
その一方、米国の司法は、欠陥人間の「ギデオン」にラッパを吹かせることで、社会を変えていくこともできるのです。日本では多くの人が、こういった米国司法の良い面を理解していないのは、とても残念です。私のたわいないニュースレターが、「ギデオンのラッパ」となって、米国司法への行き過ぎた偏見を正すことが出来れば嬉しいな、と考えているのです。
 

弁護士より一言

火傷した息子ですが、小学校の社会科の授業で、横浜で有名なところをあげるゲームをしたそうです。
「こどもの国」「ズーラシア」「日産スタジアム」「赤レンガ倉庫」などの名前があがったそうです。
息子は、「ぼくは、『横浜パートナー法律事務所!』って言ったんだけど、先生もみんなも知らなかったよ。有名じゃないの?」 ううう。。。
息子の為にも、みんなが知っている有名な事務所にしてやるぞと、決意を新たにしたのでした!
                                                               (2015年1月16日 第141号)
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