ふたりの弁護士(1)

第184号 ふたりの弁護士(1)

「ふたりのロッテ」は、児童文学の傑作ですね。ロッ テとルイーゼという、一卵性双生児の女の子の物語で す。2人は、親元を離れたキャンプ場で出会います。 一卵性双生児だから当たり前ですが、外見は瓜二つです。話していくうちに、2人は姉妹であることが分かります。それぞれ一人ずつを連れて、父母が離婚したんですね。壊れた家族を元に戻すため、ロッテはルイーゼとして、ルイーゼはロッテとして、2人はそれぞれ違う家に戻ることにするのです。
そうこうしているうちに、お父さんに再婚の話が出てきます。この再婚相手が、家柄教養ともに申し分ない若い美人で、敵役 として申し分ないのです。強力な「敵」を相手に、「 たりのロッテ」が活躍する、とても面白いお話なんですが、そんなことはどうでもいいのです。(だ、だっ たら、長々と書くなよ!!)
問題は、ロッテとルイーゼが、一卵性双生児なのに、 性格が全く違うところなんですね。1人は非常に外向的で元気がいいのですが、もう一人は、内気でおとなしい子です。一卵性双生児というのは、遺伝的、DNA的には、「全く同じ人間」ですよね。それなのに、 こんなに性質が違うなんて、何か変だなと、この本を読んだ子供のころに感じたものです。

 

大学に入り、刑法を勉強するようになると、罪を犯す人について、多くの議論がなされていることを知った のです。つまり、罪を犯すのは、遺伝によるものなのか、環境によるものなのかという論争です。常識的に考えると、「両方でしょう!」と言いたくなりますが、それではなかなか納得できないのです! そこで、この問題の解決に役立つと思われているの が、「一卵性双生児の研究」です。
先ほども書きましたが、一卵性双生児は、遺伝的、DNA的には全く同 じ人間です。そのような全く同じ人間が「ふたりのロッテ」のように、幼児のころに別れて暮らすことは現実にあります。そんな二人が、同じなのか違うのかを調べることで、「遺伝」と「環境」について研究しよ うというわけです。学者というのは、本当にすごいことを考えつくものだと、心底感心したのです。 全く同じ遺伝子を持つ二人ですから、離れて暮らしていても、似たような人間に育っていたという実例も沢山あります。
たとえば、別の家に養子に出された、神経質な双子の話です。「何故、そんな性質になったの かと思いますか?」と質問したところ、一人の回答は、「親が細かい人なので、自分もそうなったのです。」
ところがもう一人の回答は、「親がいい加減なので、 そうなってはいけないと思い、自分は神経質になりま した。」 こうなってきますと、「遺伝」の力を感じないわけにはいきません!
ところが、一卵性双生児でも、一人は普通なのに、もう一人はホモセクシャルに なっていたという実例もあります。そうなると、「環境」の力も無視することはできないでしょう。

 

弁護士の場合、同じように法学教育や司法修習を受けてきても、一人は「人権弁護士」になり、もう一人は「商人弁護士」(わ、私のことです。)になるなんて、 よくあることです。「ふたりの弁護士」の違いについ て、次回もう少し考えてみたいと思ったのでした。

弁護士より一言

中学3年の娘が、卒業研究というのをやっています。 テーマを決めて、レポート用紙60枚ほどの「成果」 を発表するのです。「みんな、どんなことを調べてい るの?」と娘に聞いたところ、多くの生徒は父親の 職業に関連した研究をしているそうです。税理士の お父さんを持つ子供は税金の研究、コーヒー用ミル クの会社の子供は、コーヒーの研究といった感じです。け、健気じゃないですか! 心底感動しちゃいま した。
そこで、うちの娘にも研究内容を聞いたんです。 弁護士の娘ですから「日本の裁判制度」とか、「冤罪 の研究」みたいなのを期待していたのですが、娘のは「駅弁の研究」でした。選んだ理由は、研究のついで に、駅弁を食べられそうだからだそうです。あ、アホ か! 食いしん坊は遺伝なのか、家庭環境なのか、考 えてしまったのでした。ううう。。。

(2016年11月1日発行 大山滋郎)
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