弁護士のさしすせそ

第213号 弁護士のさしすせそ

料理の世界には、「さしすせそ」がありますね。「砂糖」「塩」「酢」「醤油(せうゆ。ちょっと苦しいけど。)

「みそ」を言うそうです。一方、女性が男性を落とすときに使う「さしすせそ」もあるそうです。男性相手にこれを言えば、絶対にうまくいく魔法の言葉なんですね。「さすが!」「知らなかったわ。」「凄い!」「センスいいのね。」「そうなんだ!」 確かにこれは効きそうです。私は言われた記憶がないけど。ううう。。。

しかし、こういう「さしすせそ」は、別に現代日本だけの話じゃないんですね。「風と共に去りぬ」は、いまから200年近く前の、アメリカの南北戦争を舞台にした小説です。主人公のスカーレットは、当時16歳ですが、狙った男は必ず自分に夢中にさせたんだそうです。スカーレットによると、男の人の関心を引くにはコツがあるんです。まずは、相手の男自身のことを話題にしないといけない。そして、男性が良い気分になって話をすると、「あなたはなんて素晴らしいの!」「どうしてそんなことが分かるの? 私には全く気が付かなかったわ!」みたいに言えば良いそうです。うーん、お見事! これってまさに「さしすせそ」ですね。

こういう「さしすせそ」は、とても良いんですね。私は、法曹界の人たちと一緒に、プロの将棋の先生の指導を受けてるんですが、先生、とても誉め上手なんです。「さすがですね。これはいい手です。」「これは私も気が付かなかった。凄い着想ですね。」みたいに、指導対局中に褒めてくれます。冷静に考えればお世辞だと分かるんですが、「自分もなかなかのものかな。」なんて、とても良い気分になるのです。(おいおい!)

と、これほど重要な「さしすせそ」なんですが、弁護士は意外と理解していないように感じるのです。少し前に、若い弁護士から、うちの事務所への応募がありました。送られてきた履歴書や自己PRを読んだんですが、応募者本人のことしか書いてないんですね。自分は良い成績で合格したとか、自分は弁護士の仕事に対してこんな思いを持っているとか、自分にはこういう長所があるとか、そういうことばかり沢山書いてあるんです。こんな履歴書、「風と共に去りぬ」のスカーレットに見せたら、呆れ返りますよ! スカーレットなら間違いなく、応募先の事務所のことを話題にしたはずです。そして褒めますね。「貴事務所の、お客様と真剣に向き合う取組には、心から本当に感激しました。」みたいな感じです。私は常々若手弁護士にアドバイスしています。「事務所のボス一人を気持ちよくさせることが出来ないなら、独立したときに、様々なお客様を満足させられないよ。」

こういう「さしすせそ」について、多くの弁護士は否定的だと思います。「依頼者におべんちゃらを言ってる暇があれば、弁護士として力を付けろ!」なんて考えの弁護士の方が、多数派かもしれません。確かにそれも一理あることです。私だって、太鼓持ちみたいな弁護士が良いと考えているわけではないのです。

「さしすせそ」で大切なのは、相手に対する関心と思いやりを持つことなんですね。先ほどの将棋の先生の場合も、私が明らかに悪手を指したときには褒めたりしません。自分でも、「これはなかなか良い手かな。」なんて考えるときに、しっかりと誉めてくれるのです。私の指し手を誠実に見てくれているからこそ、そういうことが出来るんですね。

弁護士の場合も同じです。こっちは専門家ですから、総合的に法律の力があるのは当然です。それでも、お客様から学ぶことは沢山あります。ちょっとしたことでも、お客様の言動に関心を持ち、「さしすせそ」することは、とても大切なことだと思うのです。

弁護士より一言

「さしすせそ」の話を、高校二年の長女にしたところ、男性の方には「かきくけこ」があると教えてくれました。女性に対する、「可愛いね」「奇麗だね」みたいな言葉だそうです。なんやそれは! 「敵に偽撃転殺の計あれば、我に虚誘掩殺の計あり。」みたいな世界ですね。思わず長女に、「そんな事研究してないで、学校の勉強しなさい。」と言っちゃいました。

娘はすかさず、「さすがパパ!」 あ、あほか。。。 (2018年1月16日発行 大山滋郎)

 

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