良寛弁護士の好まぬもの
第211号 良寛弁護士の好まぬもの
良寛といえば、江戸時代の高僧ですね。相当変わった人で、多くのエピソードを残しています。鼻クソを丸めて丸薬を作るのが好きでしたが、人に見られていて捨てられなくなり、「丸薬」をまた鼻の中に戻したなんて話があります。お茶の席で、回し飲みしないといけないのに、全部飲んでしまった。そこで慌てて、口から吐いてお茶を湯のみに戻したそうです。き、汚いじゃないですか。私が次の人でなくて良かった。。。
でも、良寛みたいな人って、子供には人気がありますね。良寛も子供と遊ぶのが大好きだったそうです。
「この里に 手鞠つきつつ 子供らと 遊ぶ春日は 暮れずともよし」なんて、良寛さんの有名な歌です。大らかで良い歌だと思います。良寛は、俳句も有名です。
「散る桜 残る桜も 散る桜」
「裏を見せ 表を見せて 散るもみじ」
なんて、良い句ですね。こういうのを読むと、いずれ散ることにも気づかぬまま、「表」しか見せないで暮らしている自分の生き方を、深く反省しちゃいます。
良寛さんは、「表」の人間というだけではなく、嫌いなものを嫌いという、「裏」も見せて生活していました。良寛には、「好まぬものが三つある」んだそうです。何かわかりますか? 歌詠みの歌と書家の書と料理人の料理だそうです。こういう専門家の作るものは、受け手である一般人を置き去りにしているということなんでしょう。確かにそういうこともあるかもしれません。料理人の料理はともかく、食べ物についてうるさいことを言う、「グルメ」の人は、私も好みません。人が機嫌よく蕎麦を食べていると、「香りが飛ぶから、蕎麦をそんなにツユに入れちゃダメ!」なんて、うるさいことを言うんです。そんなに香りが好きなら、ビニール袋に蕎麦粉を入れて、スースー吸っていろと言いたくなります。(おいおい。。。)
せっかくなので、私の「好まぬもの」を続けちゃいます。「歴史家の歴史」なんてあります。鎌倉幕府の成立は、「良い国作ろう鎌倉幕府」と私が学生の頃は暗記したものです。子供に教えて貰ったんですが、今の教科書では、「良い国(1192年)」ではなく「良い箱(1185年)」なんだそうです。「パパ、そんなことも知らないの?」と、子供に言われて恥をかきました。ひ、酷すぎる。親の子供に対する面目を考えれば、「いくら正しくても年号を勝手に変えちゃダメでしょう。」と、怒りを禁じえないのです。(あ、あほか!)
しかし、何と言っても私の極めつけの「好まぬもの」は、「法律家の法律」です! 法律は一般国民のためにあるはずなんですが、専門家が独占していると勘違いしている法律家は沢山いるように思います。「素人が口出すな!」くらい言いそうな勢いなんですね。
数年前に、危険な運転の結果交通事故を起こした者を、非常に重く罰する法律ができました。これは、法律家とは無関係に、議員立法でできたはずです。議論はあるものの、多くの国民に非常に強く支持されている立法です。これに対しても、多くの法律家は反対するだけで、国民の求めるものを提供しようという意欲を、いまひとつ感じられませんでした。専門家の端くれとして、残念に思うのです。その他「憲法学者の憲法」等、私の好まぬものは沢山あるんです。あまり人の悪口ばかり言っていると、「弁護士の弁護」の方が、もっとずっと「好まぬもの」だと言われそうです。専門家として、恥ずかしくない仕事をして参ります。
弁護士より一言
高校生の娘から、問題を出されました。「水が満杯に入ったコップを、水をこぼさずに移動するには、どうすればよいのか?」という質問です。道具は使っちゃだめだそうです。この問題を聞いて、これは「良寛さんの応用問題だ!」と気が付いたんですね。
「そんなの簡単じゃん。まず、コップの水をズズズと口ですすって、コップを移動してから、水を口からコップに戻す!」 娘は当然、感心すると思ったのに、「パパってホントに。。。」と呆れられちゃいました。
良寛さん直伝の技なのに、あんまりだ。ううう。
本年最後のレターです。皆さま、良いお年を。
(2017年12月16日発行 大山滋郎)