弁護士の貞観政要 

第224号  弁護士の貞観政要  

貞観政要(じょうがんせいよう)は、今から1400年位前に書かれた本ですね。大唐帝国を事実上作った太宗皇帝が、臣下達と政治について語った内容をまとめたものです。昔から、中国はもとより日本でも、帝王学の教科書とされてきました。とても良い話が、沢山あります。帝王の業で、創業と守成のどちらが困難と考えるか?なんて議論がされています。当たり前のことですが、どちらも大変ですよね。しかし現代でも、会社を創業し、一時はとてもうまくいったけれども、最後には潰してしまったなんて、よくある話です。貞観政要の中で太宗も、「これからは守成をしっかりやろう」と言ってました。確かに、既に創業してしまった人へのアドバイスとしては、「創業は易く 守成は難し」になります。わ、私も、弱小法律事務所ですが、創業した以上、しっかりと守成もしていきます! 

太宗が、自分の得意だと思っていた弓矢について語る話も有名です。太宗は弓を得意として、馬上天下を取りました。しかし天下を取った後、自分の弓術を名人に見せたところ、欠点だらけだと分かったそうです。偉大な太宗はそこから、「得意だと思っていた弓でさえそうなら、何も知らない政治については、もっと謙虚に学ばないといけない。」と反省したというエピソードです。法律事務所を開いただけで、なんとなく経営できていたつもりの私など、言葉もないのです。

そんなに凄い太宗ですが、しようもない質問を臣下にするときもあります。「自分の政治についてどう思うか?」なんて聞いたんです。この質問は、現代社会の、「私って、何歳に見える?」というのと同じ質問ですね。答える方は、地雷を踏むのではと緊張しながら、思った年齢から10歳引いて回答しちゃいます。太宗の場合も、臣下達はみんなベタ褒めしたんですが、一人だけ注文を付けた人がいます。「陛下は、正直に進言するように言っておきながら、厳しい進言をしてくる人がいると、その進言の小さな欠点まで問い詰める。それでは誰も進言などしなくなります!」

「部下と張り合う人は管理職失格」なんて、現代の会社でも言われていますね。この忠告を聞いて、太宗は深く反省したとのことです。「パパは注意すると機嫌が悪くなるから、何も言えなくなる。」と、妻と娘に言われ続けている私とは、大違いです。ううう。。。

そんな中、太宗に「部下が本気で忠告しているのか、自分の出世のために忠告しているのか、試す方法があります」なんて進言してきた人の話が、貞観政要にありました。忠告を聞いたら、先ず怒った振りをするんだそうです。それでも忠告をする人が、本当の忠臣だということです。こういうアドバイス、たしかマキャベリの「君主論」にもありました。マキャベリの場合は、とても良いやり方として推薦していたのですが、太宗の見解は違います。「ある意味もっともな見解だと思う。しかし、臣下に誠実な対応を求めるのならば、まずは君主が誠実でなければならない。嘘をついて臣下を試すようなことはできない。」とのことでした。その一方、この進言をした人には、良い進言に対する褒美ということで、金銭を与えて、帰したそうです。

さすがの器量と、感心せざるを得ないのです!

私は何も、太宗の高みまで登ろうとは思いません。しかし、せめて家族や、事務所の若手弁護士に注意されたら、素直に反省できるところまでは、帝王学を極めたいと思ったのでした。(で、できるかな。。。)

弁護士より一言

普段はジャンクフードを買ってくれない妻が、義母たちと一泊旅行に行きました。そこで中学1年の息子の希望で、新発売のペヤング「超超超大盛 GIGAMAX」というのを一緒に食べたのです。総カロリー2142kcalで、「1日1食までにしてください。カロリー摂取基準を上回る恐れがあります。」なんて煽るような注意書が付いている、凄いカップ焼きそばなんです。「こういうのを食べるのは、男のロマンだね。」と息子は大喜びでした。こんなジャンクフードを食べたことが、いずれは妻にもばれるでしょうけど、君主の度量で怒らないで欲しいと思ったのでした。。

(2018年7月2日発行 大山滋郎)

 

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