弁護士のマスク
第265号 弁護士のマスク
Mask of Zoroといえば、「怪傑ゾロ」です。悪の総督の圧政に対抗して、マスクを付けて正体を隠した、民衆の味方ゾロが活躍する話です。ミュージカルや映画にもなっていますから、観た人も多いと思います。私も、ゾロのような、人々の役に立つ弁護士になりたいと思ってきたのです。(ほ、本当です。) 怪傑ゾロの「マスク」は、正体を隠すために、顔の上部を隠した、カッコいいものです。
しかし、現代日本でマスクと言いますと、コロナウイルス対策で付ける、口と鼻を覆うマスクを指すのが常識でしょう。マスクをしないで咳をした人が、周りから非難されたなんて事件もありました。それほど、マスクをすることは、エチケットになっているようです。その一方、何のためにマスクをしているのかな?と、疑問に感じる人もいます。咳やクシャミをするときにはわざわざマスクを外して、終わるとまたマスクをする人がいました。「な、なんなんだ、これは!」と思っちゃいました。現在マスクが入手困難ということで、高い金額で購入する人もいるみたいです。そんな貴重なマスクの内側に、唾や鼻水がつくのを避けようとしているのかもしれません。しかし、「それならそもそもマスクなんか必要ないじゃんか!」と思ってしまったのでした。
しかし考えてみますと、これは、「マスクの役割」に対する考え方の違いなんだと思い至ったのです。マスクの役割が、「自分のウイルスから社会を守る。」だとすれば、この人のしたことはメチャクチャです。マスクが一番必要な、咳をするときにマスクを外してますから。一方、マスクというのは、「社会のウイルスから自分を守るもの。」だと考えれば、この人の行動は非常に合理的に思えます。(なんだかそういう人、沢山いそうです。。。) 「何から何を守っているのか」自体、意見が分かれることはよくあります。ウイルス蔓延を恐れて、多くの国が他国民の入国制限をしたそうです。その国にしてみれば、外国人のウイルスから、自国民を守るという意図ですね。しかし、他国民の立場からすると、「ウイルスの蔓延している国に自国民が行かなくて済んで、有難い!」くらいの気持ちでしょう。
ということで、弁護士の仕事についてです。弁護士法によりますと、弁護士は「正義のために尽くす」職業だそうです。そうしますと、正義の味方として、社会を守る仕事のように思えてきます。しかしながら実際は、問題を起こしてしまった顧客からも依頼を受けて、その人のために闘います。社会のために活動するわけではなく、依頼者のために活動するわけです。
刑事事件の場合は、こういうことはさらに言えます。警察や検察は、社会のために、犯罪者を捕まえ処罰しようとします。一方弁護士は、「せっかく捕まえた犯罪者を弁護して、罪を軽くしたり、場合によっては罪をまぬかれさせたりするのが仕事だ。」なんて、多くの人に批判されてもいます。もちろん、弁護士の側にも言い分はあります。「自分が無罪の罪で逮捕されたと考えてみて下さい。」なんて言うわけです。これは確かにそのとおりです。しかし、「弁護士は悪人から社会を守るのではなく、社会から悪人を守るのだ!」という、多くの人の考えも十分に理由があるように思えます。
「怪傑ゾロ」が闘った「権力」は、明らかな「悪」でした。ことさら、無実の人を犯罪者に仕立て上げます。それに対して現代日本の警察は、社会を守っているのが原則で、冤罪事件を起こすのが例外です。例外に軸足を置いた弁護士の活動が理解されないのは、ある意味当然でしょう。弁護士が「怪傑ゾロ」のように、社会や民衆を守る存在だと理解して貰えるよう、さらに工夫と努力が必要だと思うのです。
弁護士より一言
個人的に話していると、7割くらいの人は、コロナウイルスへの対応に否定的です。「毎年のインフルエンザでも同じような被害が出ているのに、なんで今回だけ特別なんだ?」ということです。でも皆さん、表立っては、そんなこと口にしません。私も似たようなものです。。。 何にしましても、インフルエンザもコロナウイルスも、早く終焉することを祈ってます。
(2020年3月16日 大山 滋郎)