置かれた場所の戦略弁護士

第273号 置かれた場所の戦略弁護士

「置かれた場所で咲きなさい」は、10年近く前のベストセラーです。著者は、30歳近くで修道院に入り、その後36歳で女子大学の学長になったという凄い人です。

若くして責任のある地位について苦しみ、「どうしてこんなところにいるんだろう?」と悩みます。そんな中、境遇は選べないが、自分の生き方は選ぶことができると気が付いて、「置かれた場所」で花開くよう頑張っていこうと決意するわけです。生きていく上でのアドバイスが色々と載っています。

 

文房具を盗んだ子供に対して、父親が「馬鹿だなあ。このくらいのものなら、いくらでもパパが会社から持って帰ってやったのに」と言ったなんて話がありました。不謹慎ですが、思わず笑ってしまいました。子供は、親や教師の「言う通り」にはならないが「する通り」になるんだそうです。

そういえば、法律事務所の場合、勤務弁護士はボス弁護士そっくりになると言われてます。ボスがお客様に横柄な態度をとる人だと、勤務弁護士も、似たようになるというのが実感です。うちの事務所も、外からどう見られているのか、怖くなります。というわけで、とても良いことが書いてある本なんですが、基本的な考えはタイトルが示すように、与えられた境遇の中で精一杯生きなさいということです。

 

これはこれで非常に立派な考えだと思う一方、全く反対のことを勉強したことを思い出しました。マーケテイングを勉強する際のバイブルともいえる本に、ポーター教授の「競争の戦略」というのがあります。全部読んだ人はほとんど居ない(わ、私もです。。。)けれど、みんな知っているという凄い本なのです。

この本で書かれていることはとてもシンプルです。「どこで戦うかをよく選びなさい。それが戦略です」ということだと理解しています。「置かれた場所」で咲くのではなくて、「一番きれいに咲ける場所を探すための方策」が書かれているのです。戦う場所の選択を間違えると、そこでいくら頑張っても大した結果は出ません。まさに、「戦略の失敗は、戦術ではカバーできない」ということになります。これもまた真理でしょう。

 

弁護士として人と接する中で、「置かれた場所」派の人と「競争の戦略」派の人がいるのだなと感じています。例えば、会社の創業者の人など、「置かれた場所」派の人がとても多いですね。「ご縁で入った会社で頑張っていたら、声がかかって自分でやるようになり、そこで頑張っていたら今のように成功しました」みたいな感じです。会社で偉くなった人に話を聞いても、このパターンが多いですね。いずれも、「置かれた場所」を受け入れて頑張っていたら、自然と次の「置かれた場所」に移っていき、気が付いたら今の自分があったということです。そういえば、会社で出世するかどうか判別する方法というのを聞いたことがあります。自分の職場について質問されたときに、会社・上司・同僚を褒める人は出世するそうです。

 

うちの事務所では、離婚事件もそれなりに扱うのですが、大恋愛で結婚したか、お見合いで何となく結婚したかの違いは、離婚問題に全く影響を与えていないようです。「競争の戦略」の考えによれば、「結婚相手の選択」が一番大切で、そこで失敗すると、挽回困難なはずですけど、あんまりそんな感じはしません。もっとも、家庭内暴力をふるう人と結婚したらうまくいくはずないですから、最低限の選択は必要でしょう。

しかし、結婚してから、一緒に成長していく方がはるかに大切というのはその通りだと思います。うちの事務所に入ってくれた弁護士達も、頑張ってくれています。「置かれた場所」で花が咲くように、土壌や日当たりに注意していければと思っています。

 

弁護士より一言

コロナの影響で学校がなかなか始まらず、3人の子供たちもずっと家にいました。規則正しい生活とは程遠い。。。 「子供達も縁あってうちに生まれてきて、置かれた場所で頑張って生きているんだ。。。」と、必死に考えて、言いたくなっちゃう言葉を、何とか我慢するのです。「一体いつまで寝ているんだ。ベッドがおまえ達の置かれた場所か!」

                                                                                                                          (2020年7月16日 大山滋郎)

 

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