迷惑系弁護士
第360号 迷惑系弁護士
小学生の憧れの職業に、ユーチューバーが上がっているそうですが、その中にも様々な分野があるみたいです。私が特に好きなのは、「大食い系」です。特に、苦しそうに食べる人が好きです! 私みたいに、減量に苦労している人間からすると、ほっそりしている人が、楽しそうに大食いしているのを見ると、敵意を覚えます。いかにも苦しそうに食べてくれると、「まあ、あんなに苦しんでいるんだから、許してやるか」みたいな気持ちになるのです。(あ、アホか) 様々な種類のユーチューバーがある中、他人に迷惑をかける動画を配信している「迷惑系ユーチューバー」という人たちがいるそうです。多くの良識ある人達には強く非難されていますが、この「迷惑系」、かなり人気があるようです。他人のところに押しかけて、無理な要求をしたりする動画を流したりします。回転寿司で醤油差しに直接口をつけたり、廻っているお寿司を指でつついたりする動画をアップしたりして、大問題になったものです。こういう迷惑系ユーチューバーに対して、「受けを狙ってやっているんだろうが、そんなことでは誰も楽しまないぞ!」みたいな批判をしている人が沢山いました。私もこういう迷惑行為に対しては、「絶対に止めて下さい!」と思います。
でも、これが本当に受けないのかというと、そうは思えないのです。落語の中にも、こういう「迷惑系」の人が起こす騒動を笑う話が沢山あります。壺に入った水飴を棒につけて、子供が何度も嘗め回す話なんて、ユーチューブにアップされたら大問題になりそうです。でも、みんなゲラゲラ笑ってました。死んだ弟分の死体を担いで行き、香典をくれないと死体を踊らせるというのは、有名な「らくだ」です。この話は、落語だけでなく歌舞伎にもなっており、迷惑をかけられた人たちの狼狽ぶりを観客たちは笑って見ていました。さらに考えてみますと、渥美清の「フーテンの寅さん」なんて、完全に迷惑系の主人公です。「俺がいたんじゃお嫁にゃ行けぬ わかっちゃいるんだ妹よ」だなんて歌にもなっています。「分かっているなら迷惑かけるなよ!」と言いたくなりますし、こんな人が身内にいたら絶対に迷惑です。それなのに寅さんは、「古き日本の良き文化」みたいに評価されているんですね。つまるところ、みんな分別臭い顔をして色々言っていますが、結構「迷惑系」を好きだから、職業としての迷惑系ユーチューバーが成り立っているはずです。他人が迷惑をかけられているのを見るのは楽しいものなんですね。ただ、自分が被害者になる可能性に気が付いたときに、急に笑えなくなるだけなんでしょう。なんて考察していく中で、ハッと気が付いちゃいました。これからは「迷惑系弁護士」が狙い目かもしれません。もっとも弁護士の場合、裁判所と同業者に迷惑をかける人は昔からいました。
例えば裁判では、原告被告それぞれの弁護士が、主張立証を交互に行います。それぞれの主張等について、いついつまでにするようにと裁判所から指定されます。
ところが、納期を過ぎても準備書面を出さないで平気でいるような弁護士が相当数いるのです。早く裁判を進めようと考えている者にとっては、本当に迷惑です。「いい加減にしろよ!」と言いたくなります。こういうのは本当に止めて欲しい。最もさらに酷い「迷惑系弁護士」もいます。事件に関連した預り金などを使いこんでしまうような弁護士です。もっともこれは、被害者にとっては「迷惑」というより「犯罪」ですね。
ただ、同業者としては、弁護士の信頼を失わせるような行為であり、とても迷惑しているのも事実なのです。そう考えますと、周りから愛される「迷惑系弁護士」になるのは、かなりハードルが高いように思えてきました。私の場合「弁護士のニュースレター」と言いながら、役に立つ法律情報は何もない「ニュース」を配信し続けています。せめて、「少し迷惑だけどまあ良いか」と思って貰えるように頑張りたいです。
弁護士より一言
「パパは、忘れちゃう系だね」と妻に言われました。妻が話したことなど、キレイさっぱり忘れてしまうんだそうです。「そ、そんなことないだろう」と思いたいのですが、「それなら先日私がした、何々の話を覚えている?」なんて聞かれると、全く記憶にない。「お客様の話は覚えているの?」なんて嫌なことまで言われます。し、失礼な。勿論全て覚えているのでご安心を! (2024年3月1日 大山 滋郎)