アウトロー弁護士
第408号 アウトロー弁護士
アウトローというと、法に縛られず、法を無視した生き方をする人です。必ずしも悪い意味ではなくて、信念を貫く孤独なキャラクターみたいに、ポジティブな意味に使われることもあります。そういえば、アウトローの象徴的な人は、ロビンフッドだと思います。当時の国王の圧政に抵抗して、シャーウッドの森に立てこもった英雄です。私も、国家権力と対立しても、弱者を助けるアルトロー弁護士にあこがれちゃいます。しかし「アウトロー」のもともとの意味は、ロビンフッドの活躍した中世イングランドでの法制度です。そこでのアウトローは、「法に縛られない人」ではなく、「法から除外された人(法の保護の外に置かれた人)」を意味していました。ロビンフッドもそういう意味では、国家法秩序から排除された人の訳です。アウトローと認定された人の場合、例えば強盗にあっても、殺されても、国は助けてくれません。アウトローの人の死体は「狼の首」と同じように扱われたそうです。狼が保護されないように、アウトローにも一切の人権も認められないということです。さすがにこれほど凄いアウトローの制度は、現代社会には存在しません。どんな犯罪者であっても、法の保護はありますから、犯罪者を殺した人は殺人罪として処罰されます。
しかし、現代日本でも、中世のアウトロー制度に匹敵する制度があるのです。それが、反社会的勢力(反社)を、一般市民社会から排除する制度なのです。反社と認定されると、銀行口座も携帯も持てません。住居も借りられないし、保険にも入ることができないと、多くの経済的な取引から排除されることになります。うちの事務所でも、各企業間の契約書を作成するときには、必ず「反社条項」を入れて、反社やそれに関与するところとは契約をすることはできないことを明確にします。反社であることを隠して契約した場合には、それだけで犯罪とされてしまいます。
例えば、反社であることを隠してゴルフをした人が罰せられたなんていう事件がありました。正規の料金を支払っていた場合でも、これは詐欺罪になるんです。反社であったと知っていたなら契約を締結しなかったのに、だまして契約したうえでサービスをだまし取ったという理屈です。かなり凄い理屈ですが、反社相手では通用するのです。この理屈が通用するなら、お店を出禁とされた悪質クレーマーが、身元を隠して商品を購入しても同じ理由で詐欺になるはずなんですが、こんな場合、警察は絶対に動いてくれません。「警察は民事不介入です」みたいに言われて終わってしまいます。反社勢力は「アウトロー」だから、厳しい対応になるのです。実際、同じような事件を起こした人を告訴した場合、最初は全くやる気のなかった警察が、相手が反社だと分かった瞬間に、直ぐに動いてくれたこともありました。ちなみに、中世イングランドでアウトローと認定されるのは、単に重大な罪を犯したからではなかったそうです。国からの呼び出しを無視したり、税金を支払わなかったりと、国家権力と対抗するようなものが、「アウトロー」とされたんです。日本の反社も、市民への悪行という問題だけでなく、国家権力を無視するという点で、非常に厳しい待遇を受けることになります。
ということで、最後に弁護士のアウトローについて考えます。弁護士は弁護士会に登録してはじめて弁護士です。弁護士会から追放されると、法廷から締め出されます。ところが不思議なことに、依頼者に対して横領や業務放置など、かなり悪いことをしても、直ちに弁護士会から追放されるとは限りません。
一方、弁護士会からの呼び出しに応じなかったり、弁護士会の会費を払わないと、かなりストレートに「追放」処分が課されます。かなり悪質な弁護士でも、規則をしっかり守っていればアウトロー弁護士にはならないのです。
弁護士より一言
私は人付き合いが悪くて仕事以外ではほとんど誰とも会いません。先日久しぶりに知人と会ったら娘から「パパって、会ってくれる友達いたんだ」と言われちゃいました。し、失礼な。私は自分が孤高なアウトローだという認識でしたけど、娘からは仲間から排除されたアウトローに見えてたんでしょうか。 (2026年3月3日 文責:大山 滋郎)





