弁護士の対内道徳

第255号  弁護士の対内道徳

 中国の儒教では、「仁」や「義」といった道徳の大切さを教えてくれます。

 

 ところが、同じく中国の荘子によると、盗賊みたいな悪人にも、仁義といった道徳が大切だそうです。「仁とは盗んだものを仲間と公平に分けること。」「義とは仲間を先に逃し、自分が最後に逃げること。」だそうです。このことは、2000年も前の荘子の時代だけの話ではないんです。現代の反社会的勢力の人達も、強い「道徳意識」を持っているようです。仲間同士助け合い、自分のことより仲間を大切にし、決して裏切らないといった、「道徳」を守らない人間は、「悪人仲間」にも成れないんです。悪人達は、自分の「仲間」以外に対しては、どんなに酷いことでも平気でしていいと思っているようです。外の人に何をしようと、道徳的に問題ないんです。

 

 一方、自分達の仲間に対しては、お互いに助け合い、約束は絶対に守るという「道徳」を守ります。そうなりますと、悪人たちと正義の味方たちとで、少なくとも仲間内での道徳は同じものと言えるわけです。これが、古くから議論されている、「対内道徳」と「対外道徳」の問題です。そうなりますと、「悪」と「正義」の違いは、2つの道徳のうち、どちらが適用されるかの境目を、どこに引くかという点になってきます。誰に対しては「対内道徳」を適用し、誰に対しては「対外道徳」を適用するかということですね。政治の世界では、この点は特に大切になるそうです。だからこそ「政治とは何か?」という問題への回答として、「政治とは、敵と友達を分けること」という、有名な解答が出て来るのでしょう。実際、政治家の場合は、仲間と敵とで、それぞれ違う道徳を使うんですが、あまりに露骨ですから、見ていて清々しい気分にさえなってしまいます。「強行採決は絶対に許せん。」という「対外道徳」を振りかざして政敵を非難していた政治家でも、自分の党が同じことをすると、「仲間同士は、かばい合う」という、「対内道徳」を適用してきます。ヘイトスピーチは許されないという「対外道徳」を主張している政治家の場合、自分の「仲間」が、「安倍は人間じゃない。ぶっ殺してやる!」なんて言うのを聞いても、別に問題にはしないんです。

 

 政治家だけではなく、普通の人でも対内道徳と対外道徳を使い分けています。会社の場合、ブラック企業の話をよく聞きますが、これはつまるところ、従業員のことを、「公平に分ける」という、対内道徳が及ぶ仲間とは思っていない企業のことですね。これはこれで問題ですが、社会に及ぼす害悪ということで考えると、「ブラック企業」なんて大したことないように思えます。本当に「悪い」企業は、従業員にも「対内道徳」を及ぼして、公平に利益を分けてます。かつての、公害企業・談合企業にこういうところがありました。問題が発覚すると、一致団結して、社会という「敵」に向かい合うわけです!

 

 弁護士の場合も、「対内道徳」「対外道徳」の問題はあります。裁判官や検察官も含めた法律家の場合、皆で集まり研修を受けています。だから「仲間意識」がとても強いんです。

 

 以前、裁判官の奥さんの逮捕情報を、検察官がその裁判官に予め漏らしたなんて問題になりました。一般人から見るととんでもないことですが、法曹界の「対内道徳」から考えると、仲間同士が助け合う美談になるんです。弁護士としてさらに問題なのは、依頼者に対する弁護過誤などが生じたときに、仲間内の「対内道徳」でかばい合う弁護士達が相当数いることです。自分の仲間はお客様だと認識し、「対内道徳」で接する弁護士になりたいのです。

 

弁護士より一言

 先日妻がフルーツトマトを1箱買ったところ、トマト大好きな娘があっという間に完食してしまいました。妻が呆れかえっていると、息子が「だけど、トマトは身体に良いし、栄養もあるよ。」と姉をかばいます。「もっと勉強しないとだめよ。」と妻が息子に注意すると、今度は姉の方が、「家庭内暴力や引き籠りもしないで、毎日頑張ってるんだから上出来だよ! 元気が一番!」と横から親をたしなめます。

 兄弟姉妹で、一致団結して「敵」にあたるという、「対内道徳」があるのでは、と感じたのでした。。。

                                          (2019年10月16日 大山 滋郎)

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