弁護士の理由

第292号 弁護士の理由

少し前に、森元首相による女性差別の発言が問題になりました。

「女性が入ると、会議が長くなる」みたいな発言だったはずです。「あそこまで叩かなくてもいいのでは。。。」と、思わず気の毒になるほど攻撃されていました。仮に会議が長くなるとしたら、女性の方が本気で問題提起をすることが多いからでしょう。

 

弁護士の場合も、男性弁護士同士だと何となく適当なところで終わらせちゃうところ、女性弁護士の方がしっかりと問題提起してくるなんてことはよくあることです。女性弁護士が相手だと、交渉が長引くなんて言わないように気を付けます。こういった、「女性は何々だ!」みたいな発言は、昔の方が当たり前にあったようです。

 

私はシェイクスピアが好きなんですが、女性についてかなり悪口みたいな「名言」があります。「男のどんな言葉より、もの言わぬ宝石のほうが、女心を動かします」なんてありました。「金色夜叉」の、「ダイヤモンドに目がくらみ」といった感じです。もっとも、どんな言葉よりも、物言わぬお金の方が雄弁だというのは、古今東西真実のはずです。英語でも、money talks なんて言葉がありました。弁護士だって偉そうなことは言えません。良いお客様というのは、良いことを言う人ではなくて、お金をきっちり払ってくれる人なのは、間違いないところです。おいおい。。。   

 

シェイクスピアに戻りますと、「男が誓うと、女は裏切る」なんて、もてない男の恨み節みたいなのもあります。「心弱き者、汝の名は女」も有名です。女は心が弱いから、言い寄られるとすぐに浮気するという、森さんが言ったら大問題になりそうな言葉です。とまあ、現代ならメチャクチャ叩かれるような、女性についての「名言」を、シェイクスピア先生は残してくれたのですが、今に至るまであまり叩かれていないみたいです。

シェイクスピアの場合、男についても「名言」がありまして、こちらも何とも可笑しいものだからかもしれません。

「男は、愛をささやくときは四月だけれど、結婚してしまえば、十二月になる」なんて、思わず笑ってしまいます。「男は簡単に約束するが、意志がその約束に追いつかない。誓うことは得意だが、恋は苦手だ」なんて、思い当たる男性も多そうです。

 

弁護士の場合も、法律相談の段階では、凄く自信ありげなことを言っておきながら、現実に事件を受任すると、急に厳しい見通しを言う人はいます。わ、私も気を付けます。とまあこんな具合に、シェイクスピアは男女の特徴についての名言を残しているのですが、私の一番好きなのはこれです。

 

「なぜ、彼のことを素敵だと思うの?」と理由を聞かれたときの、女性の回答です。「なぜと聞かれても、私には女の理由しかありません。そう思うからそう思うのです」 そもそも、「ある人を素敵だと思う理由」という問題自体、答えにくいですよね。「お金持ちだから」とか「イケメンだから」なんて答え聞きたくないでしょう。「好きだから好き」と言われた方が嬉しくなっちゃいそうです。そもそも多くの場合、「理由」というのは、あまり意味がないことなのかもしれません。

 

そうは言いましても、弁護士の仕事では、「理由」を聞かざるを得ないこともよくあります。離婚事件で、男性側の不倫が原因というのはよくあることです。そういうときに、不倫相手より奥さんの方が魅力的なこともよくあります。男性側に浮気の理由を聞くと、「自分の心の弱さです」なんて答えます。

しかし、これまで何度も繰り返してきた人なら、かえって強い意思を感じてしまいますね。

変な言い訳せずに「なぜと聞かれても男の理由しかないよ。浮気したいから、浮気するんだ!」と、男らしく答えて欲しいと思ったのでした。

 

弁護士より一言

先日バーベキューで焼鳥をやった際に、子供たちの大好きなボンジリも妻が用意していました。すると息子が、「ボンジリはいらないよ」なんて言うのです。一体どうしたのかと妻に理由を聞かれると「若いときは大好きだったけど、最近は脂が多いのは少しでいいや。」 そ、そんな「理由」あるんか。
あんたこの4月に高校生になったばかりじゃん!                                                            (2021年5月1日 大山滋郎)

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