一問一答式弁護士

第310号 一問一答式弁護士

自宅の近所に、「一問一答式」とあだ名の付いた、あまり流行っていないお医者さんがいました。

妻が近所の人から得た情報によると、この先生の質問に対して、一言で回答しないと、怒られるんだそうです。「熱はありますか?」と質問されて、「実はおとといの晩から熱が出始め、翌朝は下がったのですが、また夕方から・・・」なんて話し始めると、「私は忙しいんだから、長い話には付き合えない。質問にだけ答えて下さい!」と怒られちゃうんだそうです。私がこの先生に診て貰うことになったとき、「パパとはきっとすごく気が合うよ!」と妻にからかわれました。

人のことを何だと思っているのかと、ムッとしながら病院に行きましたが、確かに私が診察を受けたところ、何の問題もなく「それではお大事に」と、大変スムーズに診察は終わったのです。「な、なんだ! 良い先生じゃないか!!」 

 

何故、私にとって問題なかったのか考えたんですけど、実は弁護士自体、「一問一答式」だと気が付いたのです。一番顕著なのは、裁判所での尋問ですね。裁判官と対面している証人に、横から弁護士が質問します。

普通の人は、弁護士に聞かれた以上、横を向いて弁護士に返答してしまうんですが、まずはそこから注意を受けます。横から聞かれた質問に対して、前を向いて裁判官の方を見て答えるんです。ここからして普通とは違います。裁判官が、証人の表情や目の動きを見て、証言内容が真実か見分けられるようにするんだそうです。そして、この証人尋問のスタイルというのが、まさに「一問一答式」なんです。「聞かれたことに、簡潔に答えてください」なんて、最初に裁判官が注意します。

 

これって、予め弁護士も自分の証人に説明しているんですけど、なかなか実践して守ってくれない。1を聞くと、100答える人って、本当に居るんです。刑事事件で情状証人のお母さんに、「被告人とは同居していますか?」なんて質問します。親の監督をアピールする前提として聞くわけですが、これに対する回答が長い。「離婚してから女手一つで育ててきて・・・」「この子の兄弟はみんなしっかりと育ってきたのに、・・・」「お兄ちゃんと一緒に暮らしていたときには・・・」なんて始まります。や、止めてください。一問一答だって、散々打合せしたじゃないですか! 「この弁護士は、証人との打ち合わせもできないのか」と裁判官に怒られそうで心配になります。こういう経験をしていると、「一問一答式」のお医者様のこともよく理解できるのです。

 

そもそも、一問一答を成り立たせるには、質問が的確じゃないとだめです。国会答弁みたな「質問」は問題外です。与党は「質問」のふりして政府を「ヨイショ」するだけですし、野党は誹謗中傷するだけです。でも、こういう訳の分からない質問、弁護士に対してもあります。「日本の腐った政治にモノ申したいのです。モリモト問題は憲法違反ではないでしょうか」なんて感じの質問です。

うちの事務所では、刑事事件用の、緊急無料電話相談もやっているんですけど、こんな質問も来るのです。

「えーと、おれ、ヤマダっていって、37なんですけどお、デリヘルの話なんですけどー、聞いて貰ってえ、良いですかねー」(いいから早く言えよ!) 「俺が女の子呼んでえー、なかなか良い感じでえー、本番はダメとかいうけどー、でも良いじゃんとかなってー」(イライライライラ。。。) 「ちょっとだけなんですけどー、本当にちょっとだけだったんですけどー」「後からお店の人が沢山来てー、いろいろ言われてー、なんか書かされてー、1万8000円払わされてー」 (「それって、いつの話なんですか?」) 「えーとお、7年前くらいの話ですけどー」 いい加減にせえよ! よっぽど、「私は忙しいんだから、長い話には付き合えない!」と言いたかった。

でも、弁護士のお客様対応は、「一問一答式」ではダメです。根気強く、話を聞くのが一番の仕事です。

「これも修行だ」と考えて、じっと我慢したのでした。。。

 

弁護士より一言

コロナの2回目ワクチンを妻と受けに行きました。接種前に医師の問診があり、最後に「何か質問はありますか?」と聞かれます。私は「特にありません」と答え、すぐ終わったんですが、妻のいる部屋から笑い声が聞こえます。妻は「1回目と2回目のワクチン、痛さは同じですか?」と聞いたそうです。「場を和ませたかった」と妻は説明してくれました。あ、あほか。。。                                                                                                              (2022年2月1日 大山滋郎)

 

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