弁護士のたとえ話(2)

第318号 弁護士のたとえ話(2)

たとえ話の続きです。前回も書いた通り、キリストはたとえ話の名人ということになっていますが、聖書のたとえ話は相当分かり難いのです。有名なたとえに、主人からお金を任された人たちの話があります。任されたお金を活用して、増やした人は褒められます。

一方、失うことを恐れて、そのお金をただ保管していただけの人は叱られると共に、そのお金も没収されてしまうのです。ご丁寧に、没収後のお金は、お金を増やした人に渡されたうえで、またまたキリストは得意の名セリフを出すんですね。「富める者はますます富み、貧しき者は、わずかなものさえも取り上げられる」 このたとえ話は、いったい何を言いたいのか、昔からかなり議論されてきました。法律の世界ですと、人のお金を勝手に運用しようなどというのは、とんでもない話です。

先日の、4630万円の誤振込の人じゃないですが、一歩間違えれば犯罪行為ですね。今の法律では、預かったお金をそのまま持っていることの方が正解になります。

 

このたとえ話ですが、任されたのが「お金」ではなくて、「仕事」だったとしたら、すごくよく分かりますよね。果敢にトライして成功した人が褒められ、失敗を恐れて何もしなかった人が怒られるのは、現代でもよくある話です。さらに、何もしない人から仕事を取り上げて、有能な人に回すことも当たり前のことです。こういうことって、大手の法律事務所でもよくあるそうです。仕事ができない新人弁護士には、事実上仕事が回されなくなり、それまでの仕事までも取り上げられてしまうんですね。仕事を回さないこと自体がパワハラの一種だと、厚労省のガイドラインで規定されていますが、この辺はとても難しい問題です。キリストのたとえ話は難解ですが、論語に出て来るたとえはすっきりと分かり易いです。

 

「信頼できる立派な人間とは、例えばどんな人?」という問題に対して「孤児となった幼い我子を託せる人」と答えるような感じです。素直に「うまいな!」と感心します。特に、養女に対して義父が性的いたずらをしたなんて事件を、うちの事務所でも何件も担当して来ただけに、その思いは強くなるのです。仏教にも面白いたとえ話が沢山あります。

仏門にいつまでも帰依しない人のたとえで、熱帯林に住む鳥の話があります。暖かい昼に遊んで暮らしています。ところが夜になると急激に冷え込む。凍えそうな寒さの中で、明日こそ巣を作るぞと固く誓うのですが、また昼になると暖かいので遊んで暮らすという鳥だそうです。体調不良になるとダイエットを始めようと決意を繰り返してきた、私としては耳が痛いです。

 

刑事事件の依頼者でも、事件のときなどは本当に反省して、「もう二度としません」と誓うんですが、また繰り返す人いるんですね。残念なことですが、それだけ人間は弱いものなのでしょう。たとえ話は、少し「毒」を含んでいて、人によっては反感を覚えるくらいの方が、面白く感じます。

最近読んだたとえ話に、「北風と太陽」のパロディーがありました。北風がどんなに冷たい風を吹き付けても、人はコートを脱がない。一方、太陽が暖かくしても、汗をだくだく流しながらも、やはり脱がない。どうして脱がないのかと聞かれた人は答えます。「みんながコートを着ているのに、自分だけ脱ぐことはできません」 人目を気にして、夏でもマスクを外さない人を皮肉るたとえ話です。人によっては「コロナを甘く見ている」と怒りそうですが、私は思わず笑ってしまいました。

話は変わりますが、弁護士会では「死刑反対」とか「同性婚を認めろ」といった、様々な見解を、会長声明という形で出しています。一般の人は存在も知らない「声明」の妥当性をめぐって、弁護士達は熱心に議論しています。

たとえるなら、「テレビ放映のない無観客試合で、選手だけが、ストライクかボールか熱心に議論している野球」です。

べ、弁護士会も怒らないで、思わず笑ってくれれば嬉しいのです。

 

弁護士より一言

キリストは天国を、高級な真珠や、宝の埋まった畑に例えました。でもこれじゃ、結局のところ天国がどんなところなのか分かりません。争いもストレスもない天国のたとえとして、一番納得のいくのはこれでした。
天国とは、「誰にも邪魔されずに、いくらでもシュートを決められるサッカー」みたいなものだそうです。
確かにこれは、退屈そうな気がするのでした。                                                            (2022年6月1日 大山 滋郎)

 

お気軽にお問い合わせ、ご相談ください。 TEL:0120-0572-05 受付時間 365日 24時間受付 地下鉄みなとみらい線 日本大道り 3番出口 徒歩2分

無料メール相談はこちらから