自称弁護士

第341号 自称弁護士

国際政治学者として、マスコミでもひっぱりだこの女性がいましたよね。ところが、その人の夫が、太陽光発電事業に関連した横領罪で逮捕・起訴されると、その人まで散々叩かれ始めたのです。夫と一緒に犯罪行為をしていたというのなら、非難されてもやむを得ないでしょう。しかし、別にそういうわけでもないようです。普段のセレブっぽい生活が反感を買っています。「昼間からシャンパンを飲んでいるのがけしからん」みたいなことで攻撃している人もいました。「夫が横領したお金で、シャンパン飲んでたんだろう」みたいなノリです。さらには、これまでの政治等への発言についても、「こんなけしからんことを言っていた」と非難する人もいます。面白いことに、こういった非難をする人は、男性に多かったようです。本人に勢いがあったときには何も言えなかったのに、ひとたび落ち目になったと判断するや、勇んで石を投げるような態度は、同じ男性として本当に恥ずかしく感じます。。。

そういった攻撃の中に、その方のキャリアについてのものもありました。つまり、「国際政治学者」と名乗ってはいるが、本人は農学部出身でアカデミックな背景はほとんどない。国際政治学者というのは、「自称」しているに過ぎないではないかといった非難です。この非難自体が正しいものかどうか、私には判断できません。確かに「学者」というのは「自称」できます。だからこそ「大学教授」みたいな地位が必要なのかもしれません。しかし、「そういうことは、夫が逮捕される前に言えよ!」と思ったのでした。

 

ということで、今回は「自称」について考察してみます。まず食品などの名称で、イメージが良い地名を「自称」するものがあります。別に「神戸」とは何の関係もないけれど、何となく受けが良さそうだから「神戸コロッケ」と名前を付けるみたいな感じです。うどんの「丸亀製麺」なんて有名です。こちらも丸亀とは、何の関係もないそうです。地名を商品に付ける場合、消費者をだますような表示はダメですが、イメージの良い地名を付けるのは認められているのです。もっとも、ビジネスの世界でも「自称」してはいけないものはあります。

たとえば、株式会社でないものは、株式会社と自称したら犯罪行為となります。個人商店の名称を、「大山株式会社」としてはいけないのです。会社を作るのが大変だった過去ならともかく、今みたいに簡単に会社が作れるご時世では、別に「自称株式会社」でも大して問題ないのではと思ってしまいます。さらに「自称」について、考察?を続けます。被疑者が逮捕されたときの報道に、本人の職業について、「自称会社役員」「自称会社員」といった記述がなされることがあります。こういう記事は警察から流されますので、これはつまり、「被疑者は会社役員と言っているが、警察は疑っている」という意味になります。なかには、「自称無職」なんていうのもあります。それなりの地位にいる人など、勤め先を知られたくない人が、「無職」と自己申告する場合があるのです。警察からの情報提供による報道の場合、職業に「飲食店勤務」というのもあります。こちらは、犯人だけでなく被害者の職業としてもよく出てきます。これは、本当に「飲食店」に勤めている人もいますが、風俗店勤務の人の場合も、この表記にするというのが約束事なんです。これなんて、「他称」飲食店勤務と、正しく表示して欲しいものです。

ということで、弁護士の「自称」です。「国際政治学者」の場合は、自分に自信があれば名乗ることも法律上問題ありませんが、弁護士の場合「自称」は大問題です。司法試験に合格して、1年間の司法修習を受けて、弁護士会(ギルド?)に加入して初めて、「弁護士」と名乗ることが許されます。更に弁護士の場合、自分の専門分野を「自称」することについても、色々と規制があります。私の場合、「ニュースレター弁護士」と「自称」して良いのか、悩ましいところです。

 

弁護士より一言

うちは「独立道場」ということでやっています。みんな得意分野を「自称」して、それがうまくいってから独立していったのです。始めは「自称」かもしれませんが、そうするとその関連の仕事が沢山来て、本人の勉強と相まって、本当に実力が付いて来るのです。娘にその話をしたら、「それならパパは、『気前の良いお父さん』を自称してね!」と言われちゃいました。                                                                                                                  (2023年5月16日 大山滋郎)

 

お気軽にお問い合わせ、ご相談ください。 TEL:0120-0572-05 受付時間 365日 24時間受付 地下鉄みなとみらい線 日本大道り 3番出口 徒歩2分

無料メール相談はこちらから