弁護士のワイン

第419号 弁護士のワイン

レストランでワインリストを見る人は、2種類に分かれるそうです。「ワイン名」を見る人と「価格」を見る人です。違いが分からない私は、もちろん価格しか見ません。ううう。。。 

話は変わりますが、大金持ちの趣味は2つあるそうです。

第1が美術品収集、第2がワイン愛好です。いずれもお金が必要という点、全体像を知らなくても尖った知識をひけらかせるという共通点があるのです。実際、高級ワインの名前なんかは良く知っていても、ワインの基礎的な知識は知らないって人はかなりいます。ワインなんて、ブドウをつぶしておけば、自然酵母で発酵してお酒になります。猿が木の穴に入れたブドウなどが自然にワインになる「サル酒」みたいなのがあるくらい、簡単にできちゃいます。日本酒やビールみたいな穀物酒は、デンプンを糖に分解してから発酵させるという一手間がかかります。こんな風な、常識みたいな知識を知らなくても、有名ワイナリーのヴィンテージの違いに詳しい人はいますね。弁護士の世界でもこういうことあります。依頼者の中にはネットや生成AIで予め問題の分野の法律など、しっかり調べてくる人がいます。こちらとしては初めて聞く論点ですと、その知識量に圧倒されちゃいます。それでも話していて「あれ、法律の、こんな基本的なところは知らないんだ」と思うときはあるのです。と偉そうに言ってますが、私のワインの知識なんて本当に怪しいものです。私が自信をもってワインの違いを言えるのは、「赤と白の違い」程度だと思っていました。しかし最近のネットニュースを見ていたら、その自信さえも怪しくなりました。目隠しで赤ワインと白ワインを飲ませる実験をしたところ相当数の人が間違えたそうです。視覚情報なしの、香りと味だけだと、そんな簡単なことも分からなくなるのでしょう。有名なブドウの品種に、ピノノワールというのがあります。皮や種まで潰して赤ワインの原料とするのが普通ですが、一方、皮や種を除いて白いシャンパンにも使われます。同じブドウでも、ワインにするときには、赤にも白にもなるんです。

日本でも法律家になるには、司法試験に受かって、修習を受ける必要があります。ここまでは同じブドウみたいなものです。ところが、修習を終えて検察官や弁護士になると、それぞれ「法と秩序」や「人権擁護」みたいな「色」が付いてくるのです。そして、こんな風に2つに分かれると、それぞれが特徴を出すために、ことさら違いを強調するようになるんです。2大政党制ですと、それぞれ違いを出すために、相手とは反対の政策を強調します。弁護士の中には、検察官をボロクソに言う人はかなりいるのです。

弁護士業界の内部でも、こういうことはあります。企業系の弁護士はより企業に寄り添い、労働者系の弁護士は、より労働者の為に過激になったりします。最後に価格の話をします。お酒の値段について、工程が複雑で手間がかかるほど安くなるという法則があります。

先ほど、ワインよりも穀物酒の方は作るのに手間暇がかかると書きましたが、価格を見るとワインの方が高いのが普通です。高級ワインで比較すると、ただ潰して発酵させればよい赤ワインが一番高く、種や皮を除いたりする手間がかかる白ワインの方が安い。二次発酵という高度な技術が必要なシャンパンはさらに安いのです。クロダンボネは数十万円で買えますがロマネコンティは数百万円します。と、どちらも飲んだことが無い私が言っちゃいます。

陶磁器の世界でも、技術の限りを尽くしたロイヤルコペンハーゲンの磁器より、偶然に左右される長次郎の陶器の方がはるかに高額です。弁護士報酬でもこういうことはあります。複雑な契約を作成・審査するような仕事の方が報酬が低くて、弁護士の名前と信用で解決する事案の方が高額報酬になることはよくあるのです。

 

弁護士より一言

ワインといえば、テイスティングがあります。防腐剤を使っていない昔のワインは、頻繁に劣化したので、確認することに意味がありましたが、今では儀式ですね。以前はこれやるの恥ずかしかったんですが最近は平気でできるようになりました。しかし味の違いの方は、相変わらず分からないままなのです。                           (2026年8月17日  文責:大山 滋郎)

 

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