弁護士の予言

第396号 弁護士の予言 

7月5日に津波で日本が崩壊するなんて予言がありました。

予言を信じた海外の人たちが、急遽帰国したとニュースでやっていたのです。予言と言えば、私が子供のころに「ノストラダムスの大予言」なんて流行りました。1999年に恐怖の大王がやってきて人類は絶滅する満たない予言です。これなんか、1973年に最初の1冊が出てから、数年おきに続編が出て、四半世紀国民を楽しませてくれたのです。

予言といいますと、かつて学校で「予言」と「預言」は違うものだなんて教わりました。預言の方は、神様から言葉を預かることを言い、未来を予測するだけの単なる予言とは違うそうです。ノストラダムスは「予言」ですが、聖書のイザヤやエレミアは「預言」なんです。私も長いことこの説明を信じていたんですが、中国文学者の高島俊男によると、これって日本独自のルールだそうです。高島先生によると、「予言」も「預言」も欧米語では同じ言葉なんです。日本で翻訳するときに、違う言葉して扱うことにしたんですね。神様関係は特別だから、日本語にするときは神様に忖度して、違う言葉にしたようです。こういうことって、法律の世界にもあります。

例えば一般的には「意志」という漢字を使いますが、法律用語としては「意思」という漢字を使うのです。

ところがこれらは、欧米語では同じ言葉なんです。法律で使う言葉は、一般用語とは違う言葉にしようという考えがあったんでしょう。欧米では同じ言葉を使うのに、日本に入ると「法律用語」として専門用語化するのは変な気がします。こういう話はほかにもあります。裁判には、刑事裁判と民事裁判という2種類があります。刑事裁判というのは、罪を犯したと疑われている人に、検察官が裁判を起こす事案です。有罪か無罪かなどを決めることになります。

一方民事事件は、一般市民間でのお金の貸し借りといった紛争について、一方当事者が他方を訴えることによっておこる裁判です。どちらの裁判でも、訴えた側の主張が正しいのかを、公平な裁判官が判断するという制度です。そこで、訴えられた立場の人を呼ぶ言葉は、欧米語では同じものを使います。たとえば英語ではdefendant と呼ばれます。ところが、明治以降欧米の法律を輸入した日本では、刑事裁判の場合は「被告人」で、民事裁判では「被告」というように、言葉を使い分けています。恐らく刑事事件というのは、罪を犯した「悪い人」を裁くものだから、民事裁判で訴えられただけの人とは違う言葉を使ったのかもしれません。でもそこまで考えて違う言葉を使用したのならもっと徹底的に違う言葉を使えば良かったのではと思うのです。「被告」と「被告人」だとほとんど同じようなものです。

実際、法律用語の正確な言葉を使う裁判官でも、刑事裁判のときに「被告は前に出てください」なんて言うんです。一般の人は二つの違いなんてほとんど知らない。民事裁判で訴えられた人が「俺は何も悪いことをしてないのに、『被告』とは何事だ!」と怒り出すケースは本当によくあります。これによってまとまる話もまとまらなくなる。どうせ欧米語では同じ言葉を日本では違って訳すのなら、民事裁判では原告ではなく「訴えた人」、被告ではなく「訴えられた人」と訳しておけば良かったのにと思います。そういえば最近、ストーカーなどで執行猶予中の犯人が、女性を刺殺したという事件がありましたよね。以前の判決のときに裁判官が「再犯の可能性が高い」と「予言」しておきながら、執行猶予を付けたということで批判されているようです。

こんな風に「また同じような犯罪をするのではないか?」と「予言」したくなるケースは相当数あります。弁護士の立場でもそんな予言をしたくなるのですから、検事や裁判官はなおさらでしょう。だからと言って「予言」に基づいて、重い刑にすることはできません。人権に配慮しつつ、将来の犯罪を防ぐ制度がいずれ出来ると「預言」したいのです。

 

弁護士より一言

私は減量が趣味で、何度も繰り返し減量しています。多くの人たちは、「またかよ」と冷たい目で見ます。しかし妻だけは励ましてくれるので、とても感謝しているのです。しかしそんな妻も、食事のときに残り物がでると、私が断っても、ちょっとだからと皿に盛ってくるのです。妻にとって、残り物の整理>私の減量と優先順位があるように思ったのでした。ううう                                                                                                                  (2025年9月1日  文責:大山 滋郎)

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