弁護士も真面目が大切2.0

第393号 弁護士も真面目が大切2.0

「真面目が大切」は、世紀末耽美作家、オスカー・ワイルドの戯曲です。遊び人の男が、Earnest、つまり「真面目」という偽名で女性と付き合います。男が本気になって女性にプロポーズするにあたり、自分の本名を告げます。すると女性は、自分はEarnestという真面目な名前に惹かれたのだから、名前が違うなら結婚できないと言い出します。そこで、結婚の為に名前をEarnestに変更するという喜劇です。喜劇の話ではありますが、当時のイギリスではそんなに簡単に名前を変更できたのだろうかと、少し気になりました。日本では、名前を変更するのは本当に大変です。家庭裁判所に申し立てる必要がありますが、よほどのことが無いと認めてもらえません。「名前」を変えてしまったら、かつての自分と違う人になれてしまうのが問題だからです。

以前、親から「悪魔」と名前を付けられた人の場合、名前の変更が認められたとニュースになりました。もっとも、お釈迦さまは出家に当たって自分の子供に「悪魔」と名付けました。子供というのは、自分を俗世間に執着させる「悪魔」だということでの名づけだったはずですが、常識的には酷いものに思えます。名前の変更を認めた裁判官が、敬虔な仏教徒でなくてよかったと思ったのでした。名前に比べると、姓の方が変更しやすいですね。結婚すると一般的には女性の姓が変わるというのは、つい最近までの日本の常識でした。

しかし、姓が変わっただけでも、本人が別人に成り済ます可能性はあります。実際、借金でブラックリストに載った人が、結婚で姓を変えて、新たな名前のもとまた借金をしたなんて、以前は有りました。結婚による姓の変更に関して現在日本では、「選択的夫婦別姓」が議論されています。結婚しても夫婦がそれぞれ今までの姓を使い続けることができるように法改正しようということです。私自身は、他の先進国に合わせて、制度改正して良いのではと思っています。その方が、本人の同一性にも問題が生じません。ただ、多くの女性がそれほど夫婦別姓を望んでいるかと言えば、疑問がありそうです。結婚相談所の人が面白いことを言っていました。結婚の相手を決めるときに、相手の収入はとても気になるので、必ず開示されることになります。家事分担や親の介護の問題なども、女性に寄り添う内容を開示した方が、婚活を有利に行えるそうです。

ところが、結婚後の姓を女性側にするといった内容は、基本的に女性がほとんど興味を示さない。従って男性に対して特に開示することを勧めもしないそうです。結婚が難しい「弱者男性」が相手の姓を名乗ると言っても、「尊敬できる方が良いです」と断られるそうです。話が変わりますが、少し前に日本製鉄による、USスティールの買収が決まりましたUSスティール創業者と言えば、鉄鋼王カーネギーです。この人は、合併によって会社を大きくしてきたのですが、会社合併に際しては相手の社名を採用したそうです。「名」を捨てて「実」を取るというのでしょうか、名前についてはそれほどこだわりが無かったそうです。

日本の夫婦の形でも、かつて女性は夫の姓を名乗る一方、社会に出て働くことは要請されていませんでした。名前は譲る一方で、経済的な責任を負わないで良いという「実」を取っていたような気もします。専業主婦が認められず、女性も働くのが当たり前となる中で、選択式夫婦別姓の議論も高まってきたのは偶然ではないようです。選択式夫婦別姓に反対する人は「結婚前の旧姓を通称として使用することが広く認められるようになったのだから、それで十分だ」と主張しているようです。

しかし「通称」は「本当の名前」とは違うというのが夫婦別姓論者の主張です。それなら結婚前の名前を「本当の名前」と定め、家族共通の名前を「家族生活上の通称名」と規定すれば良いと「真面目」に考えたのです。私としてはコペルニクス的問題解決と自画自賛しますが、どんなものでしょうか?

 

弁護士より一言

子供たちの名前を付けるときには考えたものです。男の子なら「〇太郎」みたいな古風な名前が良かったんですが「〇」のところをどうするのか悩みました。「悪太郎」なんて面白そうですが、「悪魔」と似たり寄ったりになりそうです。「公太郎」も好みでしたが、子供が「ハム太郎」といじめられたらと思い諦めました。こんな親の苦労を息子は分かっているのでしょうか。。。                                                                                              (2025年7月16日  文責:大山  滋郎)

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