タバコの害について

タバコの害について

ロシアの文豪アントン・チェーホフに、「タバコの害について」という一人芝居があります。
恐妻家の男が、
妻に命じられて、タバコの害について講演をするという劇です。
「実は妻が今日、煙草の害について講演し
ろと命令いたしますので、従ってそれ以上、とやかく争う余地はありません」
ところが、怖い妻が会場からいなくなると、タバコの話はそっちのけで、妻への悪口が始まります。
「妻はいつも機嫌の悪いとき、わたしのことを間抜野郎と呼ぶんです」「わたしは実に恐ろしいんです……妻がにらみつけると怖くてたまらない」「33年間、私をいじめ抜いた、あの低能で浅薄な、意地の悪い欲張り婆から逃げだすんです」なんてことばかり話します。
その後、妻が講演会場に戻ってくると、「ただ今
わたしの申し上げました通り、煙草は恐るべき毒素を含有しておりますので、その点から出発いたしまして、いかなる場合にも喫煙を許すわけにはゆかんという、結論に達するのであります」としめるという、バカバカしいお芝居です。

「タバコの害」は、130年も昔のチェーホフの戯曲でも指摘されているんだなと、妙に感心してしまいます。
それなのに、これまで
日本の裁判で、ほとんど取り上げられませんでした。

先日NHKの「あさイチ」で、タバコの害について、取り上げられていました。
マンションのベランダでタ
バコを吸う行為が、隣人との関係で問題になっているという話しです。
今からおよそ3年前の裁判で、損害
賠償を認められた事例があるそうです。
隣人がベランダで喫煙するのに悩んだ人が、150万円の損害賠償を求めて、裁判を起こしました。
煙が隣
の部屋の、タバコを吸いたくない人のところにも行くことから、ベランダでの喫煙行為は違法だと、裁判所も認定したのです。

ところが、損害の金額ですが、150万円の請求に対して、裁判所が認めたのは5万円だけでした。たった30分の1です! 「タバコの害」を認めるなら、「何でこんなに低い賠償金額なんだよ!」と、私にはとても不思議に思えます。
いったい
どこから、この5万円という金額が出てきたのかという疑問を考えていて、ハッと気が付いたのです!


実は、タバコではないのですが、煙の害について、とても有名な判例があります。
信玄公 旗掛松(はたか
けまつ)事件という、今から100年前の判例です。
武田信玄が旗を掛けたという伝説のある松が、蒸気機関車の煤煙などで枯れてしまいました。そこで、松の所有者が、鉄道に対して、当時のお金で2000円を請求して、裁判を起こしたのです。これに対して裁判所は、最終的に損害賠償を認めたのですが、金額は70円強でした。
つまり、この場合も、請求金額の30
分の1程度しか、認められなかったのです。さらに言えば、その中で慰謝料にあたる部分を、現在の貨幣価値に換算すると、おおよそ5万円になるのです。
 
私の推理によりますと、3年前のタバコ判決の裁判官は、100年前の超有名判例を参考に、同じ「煙の害」だから、請求金額の30分の1で、5万円にしたに違い無いのです!(そんなわけあるかよ!!)

多くの弁護士達が、米国の民事裁判で、非常に高額な賠償が認められることを批判しています。私もそう思います。しかし、日本の裁判では、「煙」による損害について、現在も100年前と変わらず、請求金額の30分の1、金額だと5万円程度というわずかな金額しか認めていません。これは、米国とは逆の意味で、同じくらい大きな問題だと思えてしまうのです。
 

弁護士より一言

中学校の寄宿生の次女は、いろいろと話題を提供してくれます。PTA役員をしている妻が、校内でたまたま会った担任の先生から言われました。「本当にユニークなお嬢様!! 先日、遅刻したときに、『なんで遅刻したの?』って聞いたのです。そうしたら、『朝の連続テレビ小説からあさイチの最初も見てました!』って、答えましたのよ。」
あ、アホか!
そういうときは、嘘でもいいから「朝から体調がすぐれないで。。。」と答えるもんだろう。(おいおい)
 
(2015年12月1日発行 第162号)
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