弁護士の真田太平記

第186号 弁護士の真田太平記

NHKの大河ドラマで、今年は「真田丸」をやっています。三谷幸喜の脚本で、これはこれで面白いと思い ます。
しかし、私の年代の人にとって「真田」と言いますと、池波正太郎先生の「真田太平記」なんです!真田太平記の背景は、戦国時代から徳川家康による天下統一の時代です。弱小城主のもとに生まれた、ふたりの兄弟の話です。
兄の信幸は、頭も良く、武芸にも秀でた人で、形勢判断もしっかりとできます。秀吉亡 き後は、徳川の天下だとしっかりと読み切り、家康に忠義を尽くします。二代将軍秀忠にいじめられたりしても、決して逆らったりしないで、最後まで家を守り切り、93歳という長寿を全うするのです。 それに対して、次男の真田幸村は、「内臓をまき散らしながら馬で走り抜ける」といった夢を見る、ぶっ飛んだ男です。有り余る才能を持て余し、命を燃焼させるようなことを求めていきます。関が原や、大坂冬の陣、夏の陣で、徳川が勝つと分かっていても、豊臣のためにひと暴れしないと気が済まないのです。世の中には、「勝つ」ことより大切なことがあると信じているんでしょう。まさに正反対の兄弟です。

 

ところで、私も50歳をいくつも越えて、最近ようや く、「勝つ」ためにはどうすればよいのか分かってき ました。
それほど難しくないんです! 2つのことをしっかり守ればいいのです。
まずは、戦わないこと。 そして、勝ち馬に乗る!ことです。「戦略的勝利」なんて言われるものは、この2つを守っているのだと確信しています。まさに、兄の真田信幸が実践したのが この戦略的な勝利です。下手に戦ったりしないで、勝ち馬である徳川にしっかりと従うということです。
もっとも真田太平記には、そんな長男・信幸に対して、 父親(謀将・真田昌幸です!)が、「あいつは面白く ない!」とばっさり切って捨てる場面がありました。 思わず笑ってしまいます。「戦略的に勝つ」というのは、それほど面白いことじゃないんですね。

 

弁護士をしていると、お客様にも信幸タイプの方と、 幸村タイプの方がいるなと感じています。市民として生活をしたり、企業の経営をしていると、「国や大企業の仕打ちがおかしい!」と感じることはよくあります。そういうときでも、世渡り上手な信幸みたいな人 は、決して戦おうなんてしません。「ご無理ごもっと も」ということで、強い方についていくことで、結果的にはうまくいっている感じがします。 これに対して、負けると分かっていても、華々しく一戦交えないと気が済まないような人も、一定数います。まさに、幸村タイプの人です。「今の法律や判例はこうですから、裁判になったら絶対に負けますよ。」 なんて、私も必死で説得するんですが、「それでもやる!」と一歩も退かないのです。「負けてもいいから、 灰になるまで戦う!」なんてお客様に言われたこと は、一生忘れられません。
考えてみますと、真田幸村 に、「大坂夏の陣は絶対に負けますよ。」なんて説得しても、無駄です。そんなの100も承知なんです! しかし、そういう無茶な戦いをするお客様は、魅力的な人が多い気がします。

 

私は弁護士として、信幸のように、「勝馬に乗る」ことをお客さんには勧めています。その方が絶対に得だと信じています。それでも、いいから断固戦う!」という、幸村のようなお客さんが来たときには、真田十勇士になったつもりで、サポートしたいと思うのでした!

弁護士より一言

先日、中村橋之助の「芝翫」襲名公演に行ってきま した。そこでの演目の一つが、真田幸村だったのです。幸村の影武者の首実検を、家康の御前ですると きに、幸村の息子が切腹するところが見せ場です。
「本物の父が死んだからこそ、その後を追って息子も死んだのだ」と、家康を騙すために、命を捨てたわけ です。
でもその子供は、小学5年生の私の息子よりも 小さいのです。昔の考えを今の価値基準で裁くことはできませんが、生意気を言ってもうちの子は、元気で 長生きして欲しいと、親として思ったのでした。

(2016年12月1日発行 大山滋郎)

 

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