弁護士の旧約聖書

第232号 弁護士の旧約聖書

旧約聖書は、ユダヤの民が、神様とした契約についての書物です。この契約は、「ユダヤの民が神様を崇める代わりに、神様はユダヤをヒイキする。」という内容なんです。あまり言いたくないですが、旧約聖書に出てくる神様は、かなりメチャクチャです。

エジプトで奴隷にされていたユダヤ人たちを、神がモーゼに命じて救う話なんて有名です。救うのはいいんですけど、その過程で神様とモーゼは、他の民族を騙し討ちにしたり、虐殺したりしながら無邪気に喜んでいます。ところが神様は、お気に入りのモーゼに対しても、「岩を打て。」と命じたのに、岩を2回打ったということで、大変怒ります。私がモーゼなら、「クリックして。」と言われたとき、ついダブルクリックしたところ、めちゃくちゃ怒られたような理不尽さを感じます。パソコン教室だったら、辞めちゃいます。。。

というわけで、色々と問題の多い神や人間達が出てくるのが旧約聖書です。それだけに、登場する人達は、現代の、我々の直ぐ側にいるような人間とそっくりなのです。ダビデ王の話なんかとても好きです。

当時、サウル王という王様が治めていたユダヤの国は、他の国に攻撃されていました。そこに、羊飼いをしていたダビデ少年が現れ、大活躍してユダヤの国を助けます。ダビデは教育も教養もないんですが、能力と男気がある、非常に魅力的な人物です。ダビデの周りには、多くの有能な部下たちが集まってきます。

ダビデは、サウル王の娘を妻に貰い、事実上の後継者になります。ところが娘さんは、粗野で無教養なダビデを軽蔑するんです。部下たちとお酒を飲んで、酔っぱらって寝ているダビデに、「私のお父様はそんな恥ずかしい真似はしませんわ。」みたいなことを言います。ムカッときたダビデは、奥さんと別居してしまいます。こんな話、現代の日本でもありそうです。古くから続いているがパッとしない会社に現れたヤリ手営業マンが、社長の娘と結婚したみたいな話ですね。一方、ダビデ王は英雄ですが、女好きでメチャクチャな人です。人妻に横恋慕して、その夫が邪魔になったということで、夫をとても危険な戦場に送って殺してしまうなんて、非情なことをします。しかしダビデの凄いところは、こういうときに、諫めてくれる部下が出てくるところなんです。部下に見捨てられないのです。そして、ダビデ自身、部下に諫められると素直に反省するという、懐の深さがあります。

ダビデは晩年には、自分の息子に裏切られて、国を追われます。それでも、忠実な部下たちが付いてきてくれるのです。戦いの中で息子が戦死すると、ダビデは「自分が死ねば良かった。」なんて嘆くんですが、「そんなことを言ったら、あなたのために戦った人たちがどう思うのか?」なんて、諫めてくれる部下もいるんです。私自身、お客様を見ていると、かなり無茶苦茶な社長でも、男気があって、良い部下を持っている人は、どんどん伸びている気がします。逆に、イエスマンしか周りにいない人は、遅かれ早かれダメになるようです。ダビデ王の場合は、さらに年を取りボケていきます。諫めてくれる部下の代わりに「寒さしのぎに若い美女を探しましょう。」なんて、しようもない進言をしてくれる部下が出てきます。国一番の美女が用意されてすぐにダビデは死んでしまいますが、息子たちが、その美女をめぐって殺し合いを始めるのです。

こういう話を読むと、私自身とても怖くなります。私は、メールの誤字や、お客様との話し方など、若手弁護士に注意されることが多々あります。正直、うるさく思うこともありますけれど、注意されるうちが華なのだと思い、素直に反省したいと思うのです。

弁護士より一言

多くの人達を見てきますと、夫婦仲よく家庭がうまくいっている人が、死ぬ時まで幸福に生きられる率が高いように思えます。ダビデ王も、奥さんとケンカしないで、折り合いながら暮らせたら、もっと良い晩年を送れたはずです。だらしない私とでも仲良くしてくれる妻を、大事にしていこうと思ったのでした。。。

(2018年11月1日 大山滋郎)

 

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