結婚弁護士の一人説(2)

第271号 結婚弁護士の一人説(2)

偉大な学説の場合、たった一人の人が始めた「一人説」でも、世間に受け入れられていきます。ドーキンス博士の「利己的な遺伝子」なんて、私も本当に感動しました。人間の世界について考えるのに、それまでは「人間」に焦点を当てていましたよね。当たり前のことです。

 

しかしドーキンス大先生は、人間は遺伝子の「乗り物」に過ぎないと考えて、遺伝子レベルで物事を考えることを提唱したんです。一般常識からはかけ離れていますが、今ではドーキンス博士の理論は、一人説から多数説へと発展しています。というわけで、私も偉大なドーキンス博士の真似をして、一人説を考えたのです! ドーキンス先生によれば、「人は、遺伝子の乗り物に過ぎない」わけですが、私の一人説によれば、法律制度としての結婚は、「男女は、財産の乗り物に過ぎない」という思想で作られたものなんです。(本当かよ!!) これって、西洋近代市民社会での結婚制度では常識だったはずです。日本でも、戦前の家督相続のもとでは、結婚は家と家を結びつけるものでした。そういう中では、結婚制度が財産移転制度だなんて、当たり前のことでした。もちろん結婚自体は、男女が愛情をもって、合意のもと成立するものです。しかし、法律制度のとしての結婚は、それとは別物だったということです。

 

ただ、「結婚制度の本質は財産移転のルールにあり」というのは、私の一人説というよりも、ある意味法律家にとっては常識でもあるんです。私が40年ほど前に、大学に入って婚姻法の講義を始めて受けたときに、「法律家にとっては、婚姻の法律は、相続法の前提として、一番大きい意味があるんだ」と教授が教えてくれたのを覚えています。もっとも、世間一般の人も、この「結婚においては、人は財産の乗り物に過ぎない」という考えを、無意識にでも理解しているように感じます。世間では、「日本では一夫多妻制度が禁止されている。」なんて言われてます。人によっては、日本でもそういう制度を認めるべきだなんていう人もいます。しかし、これは凄い誤解ですよね。日本でも事実上一夫多妻は全然問題なく出来ます。実際に、そうしているような人は沢山います。日本の制度では、「財産の移転が認められている結婚」を、複数の人とは出来ないというだけです。「一夫多妻制」については、非常に誤解が大きいように思えます。「一夫多妻制度が禁止されていることで、甲斐性があって魅力的な男性が不利益を被っている。」なんて意見を聞いたことがあります。でも、私に言わせれば、これはまったくの間違いです。

 

問題は、現在の日本では、法律上の結婚をしない限り、経済的に弱い立場の人(通常は女性です)は、財産移転を伴う法的保護が全く与えられないことにあるのです。

 

ということで、私の一人説です。これまで事実上野放しで行われていた「一夫多妻」の関係を、経済的に弱い立場の「妻」を法律で守るべきだということですね。もともと、結婚法と労働法は類似点が多いと、前回説明しました。それなら、結婚していない「妻」は、労働法で守ればよいと考えたのです。雇用主が多数の従業員を持つように、多数の「妻」を持つこともできますが、労働法が適用される中、妻の側も、嫌になったら、いつでも「退職」できます。

 

結婚の場合は、妻も自由に離婚はできませんが、労働者なら好きに辞められるんですね。その一方、雇用主の側からの一方的な「解雇」はできないので、「妻」の立場も安定します。給与も残業手当も有給休暇もありますので、現状よりもずいぶんと良くなるように思えます。

 

私としては、「なかなか良い考えだな!」と思う一方、これは永久に一人説のままだろうと確信しているのです。。。

 

弁護士より一言

こんな笑い話があります。売れない作家が友達に自慢したんです。「僕の本の読者は、最近2倍に増えたんだよ。」 それに対して友人が答えます。「おめでとう! 結婚したんだね。」 私の「結婚についての一人説」も、妻がいるお陰で、きっと二人説にはなれるはずです! 一夫多妻だなんて、身の丈に合わないことを考えずに、妻に感謝し続けます。

                                                                                                                          (2020年6月16日 大山滋郎)

 

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