下流弁護士(1)
第350号 下流弁護士(1)
下流老人なんて言葉が、数年前から流行語になりました。これは、低収入・低貯蓄のうえ、頼れる人のいない老人なんだそうです。普通に暮らしていた人でも、油断していると下流老人になってしまうそうです。以前よりも寿命が大きく延びたのだから、長い老後の準備をしないと、「下流」になってしまうというのも、よく理解できます。もっとも、下流老人だけではなくて、下流弁護士というのもあるそうです。弁護士の世界も、上流と下流に分かれてきているというのです。上流弁護士は、大手事務所に採用されて、初年度から年収1000万円以上が保証されるそうです。それに対して下流弁護士は、どこにも採用されずに自宅で開業するタク弁とか、携帯1本で活動するケータイ弁なんて言う人もいるそうです。収入が少なすぎて、カップラーメンのみで飢えをしのいでいるなんて話がありました。さすがにこれは嘘だと思いますが、年収が300万円未満の下流弁護士もいるなんて、話題になっていたのです。
このように、最近は弁護士の格差が開いているなんて言われてるんですが、考えてみるとこれって昔からあったようです。1984年といえば、今から40年前、丁度バブルに突入するころです。そのときのベストセラーが「金魂巻」という本です。そこで取り上げられた○金(マルキン)○ビ(マルビ)が、流行語1位でした。私と同年代の人は覚えてますよね。当時人気の31の職業について、お金持ちの○金と、貧乏な○ビを面白おかしく対比した本です。この職業の中には、弁護士も入っており、○金弁護士と ○ビ弁護士が比較されています。これが妙に具体的でおかしいのです。○金弁護士は収入6000万円。お金持ちの息子で、自宅は成城の実家だそうです。丸の内の事務所で、22名の弁護士を雇用しています。これに対して○ビ弁護士は、北区の小さい旋盤工場の息子(と、やけに具体的です)で、事務所も友人3人と借りた八百屋の2階の事務所で、白菜の切れ端が足の裏にくっつくんだそうです。ちなみに自宅は千葉県浦安市(浦安の方、ごめんなさい。で、でも私が言ったんじゃないんです)の賃貸物件で、扱う仕事は、労多くして対価の少ない国選弁護が主体なんです。
これに対して、○金弁護士の方は、三井不動産、新日鉄、武富士の顧問をしているんです。(ここで武富士が出てくるところに、時代を感じました) 私なんか、どうしたらこういう凄い会社と顧問契約を結べるのか気になりますが、それについてもちゃんと回答が書いてありました。答えは、「親のコネ」なんだそうです。ううう。。。
この本によると、世の中には○金の子供が○金になる、「○金相乗効果の法則」というのがあるんだそうです。「親ガチャ」は今に始まったことではないんですね。「金魂巻」で取り上げられている「職業」には、お父さん、女子大生、不良少女なんてものまでありました。こういう人たちの○金○ビがどこで決まるかといいますと、これまた親が金持ちかどうかという違いです。あ、あまりに身も蓋もない。でも、皆うすうす気が付いていても、なかなか口に出せないことをズバッと指摘したのは痛快でした。弁護士の話に戻ると、当時の○ビの年収は700万円だったそうです。その頃に比べて、物価は25%上昇していますから、今の基準だと900万円近い収入です。当時は○ビ弁護士でも相当恵まれていたんですね。一方弁護士の人数は、この本が出た1984年には1万3000人程度だったのが、現在では4万5000人と3倍以上に増加しています。かつての○ビ弁護士1人の収入900万を、3人の弁護士で割ると、丁度現在の下流弁護士の収入300万未満になりました。ちなみに金魂巻には、○金○ビ弁護士の読書についての考察もありました。○ビ弁護士は専門書しか読まないのに対して、○金弁護士は「紅楼夢」を読破するそうです。わ、私も実は紅楼夢を読んでいますと、さりげなく?自慢しておきます。
弁護士より一言
下流と上流の違いは、食事のマナーを見ると簡単に分かるそうです。しかし、私の食べ方はマナー以前だと、家族からいつも叱られます。ショートケーキがお皿に並べられている時に待ちきれなく、そのままつまんでパクリと食べてしまったんです。「パパ! 野生のゴリラならいいんだけど、人間なら人間の生活をしようよ!」と娘に言われました。家族に見放された下流老人にならないよう、今後は気を付けます。。。 (2023年10月1日 大山 滋郎)