弁護士の三銃士

第358号 弁護士の三銃士

冒険小説と言えば、何といっても「三銃士」です。

200年近く前の小説ですが、今読んでも本当に面白い。田舎から銃士隊に入るためパリにやってきたダルタニアンが主人公です。主人公は来た早々に、三銃士と呼ばれる銃士隊の凄腕3人と争いを起こし、3人それぞれと決闘で白黒つけようということになるんです。どうにも野蛮な話ですが、冒険小説の冒頭として、本当に人を惹きつけます。

ちなみに決闘みたいな、暴力で紛争解決しようというのは、どこの国でもあったようです。日本でも江戸時代には、果し合いがよく行われていました。そんな中で、明治に入って「決闘罪ニ関スル件」という法律ができます。決闘をした人たちだけでなく、決闘立会人や決闘場所提供者と、決闘に関与した人たちは全て処罰されます。さらには、決闘に応じなかった人を「卑怯者」と呼んだりすることも、処罰の対象です。

ちなみにこの法律、現在もまだ生きています、少し前に、不良少年たちの喧嘩に対して、この法律が適用されたなんて事件もありました。ということで、三銃士の話に戻ります。ダルタニアンが活躍した頃は、人と人との紛争は決闘という手段で解決するのが当然の時代だったのです。こういう時代に終止符を打ち、暴力は国家が一元的に管理するのが近代国家です。こういった国家の近代を押し進めたのが、三銃士の中の敵役であるリシュリュー枢機卿です。「喧嘩上等」の主人公とは合わないわけです。有名な「ペンは剣より強し」というのは、この人の言葉だそうです。ダルタニアンや三銃士みたいに、剣(暴力)で直接解決するのではなく、暴力を独占している国家をペンで動かす方が強いんだというのが、この言葉のそもそもの意味なんですね。そう考えますと、この言葉は別に「正義」についてのものではなく、「近代国家とはこういうものだ」という事実を述べただけのような気もします。喧嘩は強くても、考えを整然と述べられない人の方が、弱い立場になるのが現代社会です。

ということで、裁判所や弁護士の話になります。現代では、紛争は決闘ではなく、裁判で解決されます。各当事者が「ペン」をもって議論し、裁判官が判断する仕組みです。「ペン」を扱うのが得意な人の方が有利になるのは当然です。もっとも、かつての決闘の時代にも、「決闘代理人」の制度があったそうです。「剣」に自信のない人でも、代わりに剣豪を代理人にして、決闘に勝つこともできたのです。なんかずるいような気もしちゃいます。

しかし、考えてみますと、この「決闘代理人」の役割を現代社会で果たしているのが弁護士なんだと思い至ったのです。ずるいなんて言って、済みませんでした。しかし裁判に、弁護士を付けずに自分で対応する人もいます。本人訴訟というんですが、「ペン」の力があまりない人でも、自分でやりたがる人はいます。「何か言い分はありそうだな。。。」と思わせる文章であっても、主張自体がボヤっとしているうえに、恨み辛み満載の文章だと、何を言っているのか分かりません。私が司法修習中にお世話になった裁判官も、「法律的に何かありそうな気もするけど、弁護士も付けずに訳わかんないこと言っているんだから、敗訴でしょうがないよ」と割り切っていました。

こういう人の代理人をするのは、弁護士としてもかなり大変です。時間をかけて事情を聴いて、法的に意味のある主張にまとめないといけません。しかしそれを読んだ依頼者からは、「自分の言いたいことが全く伝わっていない!」と怒られたりするのです。かつて決闘代理人も、「そんな剣の使い方じゃ勝てるわけない」なんて、依頼者に言われていたのかもしれません。そう考えると、何とも可笑しくなってしまうのです。

 

弁護士より一言

バラの花を咲かせようと思い立ち、まずは勉強の為に本を読みました。三銃士の敵役の「リシュリュー枢機卿」なんて名前のバラもあります。枢機卿の象徴である緋色のマントを思わせる、華やかなバラです。こういう風に、バラの勉強はしたのに、なぜか私が植えたバラは、1年もしないで枯れてしまいます。「勉強よりお世話をしてあげないと」と妻に言われました。。。                                                                                                              (2024年2月1日  大山 滋郎)

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