弁護士のリア王
第377号 弁護士のリア王
シェイクスピアの傑作悲劇として名高いリア王です。リアの長女と次女は、自国イギリスの公爵と結婚しています。王が一番可愛がっている三女には、公爵とフランス王が求婚に来ています。
そんな中、年老いたリア王は引退して国を3つに分けて、娘たちに譲ろうとします。リア王が、国を譲って権力をなくすことから悲劇が始まるんです。そんなわけでリア王に関しては、「引退して国を譲る行為自体が間違っている」といった論評が多くあるようです。でもそんなこと言ったら、いつまでたっても老人が支配する世の中で、世代交代などできません。潔く引退しようというリア王の行為自体は、もっと評価されるべきだと思うのです。しかし、普通に譲ればいいものを、3人の娘それぞれに、「自分をどれだけ愛しているのか?」を発表させ、それによって何を譲るのかを決めると言い出します。こういうくだらないことをするのが、まさに「老害」の特色ですね。
姉二人は、「お父様を自分の目や耳より、何よりも愛します」なんて言って、リア王を喜ばせる。
一方三女は、「言うことはありません。娘の義務として父を愛します」なんてことを言い出して、リア王を激怒させます。この出来事に関してリア王は、「姉二人の甘言に騙される一方、三女の真心が理解できない愚かな王様」と非難されています。でも、姉二人の言葉ですが、このくらいのおべんちゃら、誰でも言いますね。会社勤めのときなど、私も上司に似たようなこと言っていました。ううう。。。
自分がボスになった現在では、事務所の若手弁護士に「このニュースレターどうだった?」と、感想を求めたりします。「メチャクチャ面白くて勉強になりました!」と言われたら嬉しくなる一方、「何も言うことはありません。勤務弁護士の義務として読みました」なんて言われたら、「け、喧嘩売っているのか!」と腹が立ちそうです。三女の言葉に激怒したリア王は、国など一切譲らず、親子の縁を切るとまで言い出します。これを聞いて、二人の求婚者のうち公爵は去っていく一方、フランス王は三女の真心に感動して、持参金など無くても結婚すると言い出します。この後、1週間ほどの間に一気に話が進みます。国を譲られた長女と次女は結託して、即座にリア王を嵐の荒野に追い出します。娘の裏切りにあったリア王は狂っていく。それに対して、三女と結婚したフランス王は、リア王を助けるために軍を率いてやってくる。しかし最終的に、リア王も3人の娘たちも全員死んでしまうという悲劇なんです。「リア王」はシェイクスピアの大傑作と言われてますが、なんかよく分からない話なんですね。謎が多すぎます。
なんだって三女は、わざわざ父親を怒らせるようなことを言ったのか不思議です。追放されたリア王を助けたい気持ちは分かりますが、軍を率いてくる必要があったのかも疑問です。そもそも、軍隊なんてそんなにすぐに出せないから、予め準備していたとしか思えない。何か裏がありそうです。「真実は常に一つ」ということで、果敢に推理しちゃいます!
そもそもリア王は、三女の結婚相手として公爵を予定しており、フランス王は当て馬に過ぎなかったと思います。フランス王と結婚させたら、領土がフランスに統合されてしまう。さらに三女がフランスに行ってしまえば、自分の老後を面倒見てもらうという計画もダメになる。
一方、自分が当て馬だと気が付いたフランス王は、三女と共謀して、わざとリア王を怒らせたんでしょう。これによって本命の公爵は身を引いた。三女と結婚したフランス王はかねてからの計画通り、「三女の権利確保」とか「老王保護」を名目に軍事行動を起こしたんです。と、こんな具合に妄想しちゃいますが、こういうこと弁護士の仕事でもよくあります。警察検察が作ったストーリーの矛盾を見つけ出して、被告人の為の新しい話を作り上げていきます。実際、法廷で「真犯人」を名指しした弁護士もいました。す、凄すぎる。。。
弁護士より一言
私は、妻がいなくなると、ついつい煎餅を食べたりお酒を飲んだりしてしまいます。たまに、いないと思っていた妻に見つかり、呆れられます。「本当に油断ならない!」と妻が言ったら、娘が私をかばってくれました。「でも、そういうことするのパパだけじゃないよ。ワンちゃんだって、飼主がいなくなると好き勝手するんだって!」 い、犬と比べないでくれ。。。 (2024年11月18日 文責:大山 滋郎)