法窓夜話
法窓夜話
このニュースレターも、今年最後になりました。我ながら、くだらないことを書いてきたなと思います。
法律関係者のエッセイで、一番有名なものは、なんと言いましても穂積陳重先生の「法窓夜話」なんですね。今回少し読み直してみたんですが、内容的にはほとんど現代でも通用しそうな気がします。
たとえば、結婚についての文章はこんな感じです。本当は品格のある文章ですが、適当にはしょりながら、品格を下げて紹介してみます。
古代では、結婚に国家が関与したケースが多々あったということです。例えば、インカ帝国の共同結婚なんていうのがあります。これは、若い人たちを、同じ日に、共同で結婚させる制度だそうです。私なんか、まるで統一教会だ!なんて思ってしまいますが、こうすることで、土地の開拓に必要な人口増加や、治安の維持などが達成されるんだそうです。
日本の場合も、神無月には、各地の神々が出雲に集まって、結婚を取り仕切るということになっていましたが、これも、古代国家の社会的要望からでているのかもしれないと、穂積先生は考察します。
翻って穂積先生は、これが書かれた頃の日本の現状を考えます。そこでは、婚期の遅れ、独身の増加といった問題が生じている!
だからといって、古代国家のように、国家が強制的に結婚させるわけにはいかないと、穂積先生はさすがに良識派です。結論と致しましては、結婚を奨励し、結婚への障害を除くことが、政治家の役割である、ということで終わるわけです。
なるほど、こういう考えで民主党は子供手当てを作ったのかなんて、思ってしまいそうですが、この「法窓夜話」は今から大体100年ほど前に書かれた本なんですね。当時も、「若い者が結婚しない!」などと言われていたようです。知りませんでした。
「法窓夜話」を書かれた穂積先生は、法律を学んだことのある人なら皆知っている大先生なんです。明治に出来てから、ほとんどそのままの形で現代まで続いている日本の民法を作ったのはこの人です。帝国学士院院長、枢密院議長と、なんのこったかよく分からないんですが、大変エライ人でした。奥様も、明治の大実業家、渋沢栄一の娘さんということで、私など自分と比較しようという気持ちもなくなります。
(うちの妻もとても良い妻ですけどって、取って付けたように書いときます!)
この人の書いた本は、今の私なんかから見ても、とても面白いんです
ね。「刑罰というのは復讐だ。」とか、「人権思想などというのは、たわごとだ。」といった、現代の常識からは大きく外れたことを書かれています。とても面白いので、このニュースレターでも、引き続き紹介していけたらと考えているわけです。
私のニュースレターも、今から100年後の誰かが、「昔もこんなことを書いている人がいました。」と、他人に紹介してくれれば嬉しいな、などと夢のようなことを考えて、本年最後の発行とさせていただきます。
来年も宜しくお願いいたします。
弁護士より一言
前回のなぞなぞについて、沢山の暇な、じゃなくて、意欲のある方から回答を頂きました。有難うございます。頭の良い楽器はリコーダー(利口だ)、おじいさんとする球技はソフトボール(祖父とボール)ですね。くっ、くだらない!
弁護士をしていますと、痴漢冤罪事件の話を聞く機会がよくあります。こういうのは、怖いですね。
痴漢事件の当事者数名から、「電車の中で、自分の前に立っていた女性が、いきなり振り向いた。睨まれたので、目をそらしたら、次の駅でその女性に、痴漢だと大声を上げられた。」などという話しを聞きました。怖いなあとは思っていましたが、どこか他人事のような気がしていたのも事実です。
ところが先日、久しぶりに混んだ電車に乗ると、ちょうど私の前が女性です。万が一にでも痴漢と言われないように、左手で鞄を持って、右手はつり革に掴まっていました。ところが、前の女性が怖い顔で、いきなりこちらを振り向いたのです。ドキッ
(次回に続きます)