弁護士の1万時間(1)
弁護士の1万時間(1)
「天才! 成功する人々の法則」という、とても面白い本があります。様々な分野で「天才」といわれる人たちは、どのようにして生まれてくるのかについての本です。この本の中に、「1万時間の法則」というのがあります。どの分野においても、卓越した能力を示すようになる人には、共通点があるそうです。それが、「1万時間」そのことに真剣取り組んだということだそうです。個人の生まれながらの能力は、大して関係ない。ごく一般の才能(通常それほど高くないとのこと)さえあれば、あとはどれだけ真剣に、時間をかけて努力をしたかが大事なわけです。
例えば、音楽学校の生徒の、バイオリンの成績の話があります。トップクラスの生徒、ある程度うまい生徒、平凡な生徒について、それぞれの練習時間を比較すると、明確な相関関係が見つかるというのです。沢山練習しているのに平凡なバイオリニストはいない。十分な練習をしていないのに、トップクラスになる「天才」もいないということです。沢山の時間をかけて練習した人が、それに見合う成績を手に入れるのですね。
そして、こういう長時間の練習が可能となることは、「運」によるところが大きいということです。まず親が大変熱心で、子供が小さいころから英才教育をした場合に、「天才」は生まれやすくなります。音楽のモーツアルト、野球の星飛雄馬やイチロー、テニスのウイリアムズ姉妹、ゴルフのタイガー ウッズその他、親がメチャクチャ熱心で、子供のころから英才教育を受けた「天才」が多数います。子供のころからの練習時間ですから、10代で1万時間の法則を満たし、其の後さらに研鑽を積んで「天才」となるわけです。
そういう親の元に生まれるのも「運」ですが、それ以外に、カナダのアイスホッケーの選手の話がありました。有名な選手は、ほとんど1-3月生まれだというんですね。カナダの場合、1月から学校が始まりますので、1月生まれの人は12月生まれの子供より、約1年間も成長しているので、身体も大きく、成熟しています。従って、ホッケーもよくできます。すると、その子は「才能」があるということで選抜され、沢山の練習ができる環境に置かれます。そこから、「1万時間の法則」により、本当に実力がついていきます。
まさに、早生まれという「運」によって、名選手になれるかどうかが決まるわけです。こういう面白い話が沢山載っている本です。
考えてみますと、この法則によって多くのことが説明できるような気がしてきます。「家元制度」なんてありますよね。歌舞伎なんかもそうでしょう。世襲で一定の技能を継いでいきます。批判も多いですが、それなりにうまくいっているように思えます。これも、家元に生まれたということで、それなりの環境が与えられ、そこで1万時間の法則を適用して努力すれば、みんな一定の実力に達するからだと思います。
職人さんや板前さんの世界では、ヤル気さえあれば学歴・経歴など気にしないで採用しますよね。そういう世界では、入ってから死ぬ気で1万時間頑張頑張った人は、どこに出しても恥ずかしくない実力を身につけることができるわけです。その一方、板前の修行などしないでも、お客様の支持を得て大繁盛の居酒屋を作りあげる人もいますよね。1万時間使わなくても生まれながらの「才能」で成功する人もいそうです。
ということで、弁護士の場合、果たして「1万時間の法則」は適用されるのか、それとも「才能」さえあれば何とかなるのか、次回検討してみます。
弁護士より一言
親が子供を小さいころから鍛えれば、「天才」を作ることが出来るんですね。これってすごいことだと感じ入りました。親の責任は重大です!
そこで、少し遅いかもしれませんが、中学生の娘に将来何になりたいのか聞いてみたのです。
「うーん。1日テレビを見てのん気に過ごす人!」
あ、あほか! しかし、そういうことなら、親子で一緒に、1万時間テレビを見ますか。。。
どんな「天才」が生まれるのでしょうか?
(2015年7月1日発行 第152号)