弁護士の「歴史」

第254号 弁護士の「歴史」

 「歴史」と言えば、ギリシャのヘロドトス大先生の、今から2500年位前の著書です。私も、学生の頃に読んで、感動したというか、呆れたのを覚えています。この本は、ギリシャが、当時の強国ペルシャの侵攻を防いだペルシャ戦争の記録です。これ自体、本当に凄いことですから、記録したくなるのは当然です。現在で言えば、ベトナムがアメリカの侵攻を防いだ、ベトナム戦争くらい凄いことだったはずです。

 

 ところが、ヘロドトス先生の場合、話にまとまりがないと言いましょうか、読んでいて、「あれ、今何の話をしてたんだっけ?」と、分からなくなるんです。ペルシャ戦争の話をするなら、戦争が起こる少し前から話を始めればいいと、普通の人なら思いますよね。ところが、ヘロドトスの場合、例えばベトナム戦争の話をするなら、アメリカ合衆国の成立どころか、それ以前の、インディアンの部族間抗争の話から始めます。ヘロドトスの名言で、一番有名なのは、「エジプトはナイルのたまもの」というものだと思います。歴史の教科書で習いますよね。つまり、ペルシャ戦争の話のために、エジプト文明の成立まで遡っちゃうわけです。ペルシャについても、それが滅ぼした前王朝の話ならまだしも、前々王朝の話が出てきます。こういう散漫な話の場合、詰まらなければ誰も読まないんですが、ヘロドトス先生の話は面白いんです。ぶっ飛んだ、興味深い話が沢山出てきます。ペルシャの前々王朝の王様は、奇麗な王妃が自慢でした。そこで自分の部下に、「妻の裸は本当に奇麗だから、絶対に見てみろ。」と命じます。このときの部下の返事が、また「名言」として有名です。「お止め下さい。女性というのは、服を脱ぐと共に、恥じらいの気持ちも無くすものです。」

 

 このことを知った王妃は激怒します。部下に、「王を殺して、自分と結婚するか、いま殺されるか。」と迫ります。この結果、王は殺され、ペルシャの前王朝が成立したという話ですね。ほ、本当ですかと言いたくなります。ヘロドトス大先生の場合、こういう面白い話が至る所にあります。ある蛮族間(ギリシャからすれば、自分達以外はほとんど蛮族でしたけど)の戦争で、子供たちを人質に取って、母親たちに要求を突き付けた話があります。「要求をのまないと、お前たちの、子供を殺すぞ。」というわけです。これに対して母親たちは、自分たちの性器を見せて、「そんなもの、ここから幾らでも出て来るわ!」と怒鳴り返したという話です。さすがにウソやろう、と思いました。

 というわけで、弁護士の話です。弁護士の仕事で一番大変なのは、法律じゃないんです。一方当事者である依頼者から話を聞いて、案件全体の事実を明確にする、これがとても難しい。じっくりと事実関係をまとめてきてくれる人は大変ありがたいのです。(もっとも、まとまりすぎていると、それはそれで「作り物ではないか?」と不安になることもあります。す、済みません。。。) 困るのは、話が長くて、あちこちに飛ぶ依頼者です。

 

 例えば刑事事件の依頼者に、「なぜこんな犯罪をしようと思ったんですか?」なんて質問します。そうしますと、自分の幼少期から語りだすのなんてまだいい方で、凄い人になるとお爺さんの話まで出てきちゃいます。離婚や相続といった「骨肉の争い」になるような事案だと、もっと凄いです。長くてまとまりのない話を聞くのは苦痛ですが、なかなか話の腰を折れない。私が適当なところで話を本筋に戻すと、若手弁護士から、「よく終われましたね!」と感心されちゃうのです。もっとも、会社の創業者の方などで、話があちこちに飛ぶけれど、どれも面白い人はいます。事件の全体像をつかむのは非常に大変ではありますが、こちらもついつい聞き入ってしまうのです。

 

弁護士より一言

 「歴史」みたいな、一貫性のない話し方ということで、ハッと気が付きました。これって、私が妻の話を聞くときに思うことなんです。「今日、料理教室であった面白い人の話。」をすると話し始めても、何故か昨日行ったところの話になってます。「なんの話をしてるんだっけ?」なんて言うと、「パパは本当に、会話を楽しむってことを知らないのね。」と怒られます。いずれ時間が出来たら、妻のように大らかな気持で、再度ヘロドトスにトライしてみたいものです。

                                         (2019年10月1日 大山滋郎)

お気軽にお問い合わせ、ご相談ください。 TEL:0120-0572-05 受付時間 365日 24時間受付 地下鉄みなとみらい線 日本大道り 3番出口 徒歩2分

無料メール相談はこちらから