弁護士の謎ルール

第260号 弁護士の謎ルール

 「このルールに、一体何の理由があるのだろう?」と、疑問に思うことはよくあります。こういうのを、「謎ルール」と言うそうです。オーブンで大きな肉を焼くとき、必ず両端を切り落としていた人の話があります。自身のお母さんから教えて貰った美味しく肉を焼く「秘訣」ということで、ずっと守っていました。

 

 しかし、お母さんが肉の端を切っていたのは、オーブンが小さかったからだという話です。世の中のルールには、こういうものが多いように思います。世の中には、食べ物にうるさい男性っていますよね。お蕎麦を食べるときにも、「つゆは少ししか付けてはいけない。」なんて謎ルールを主張する人がいます。池波正太郎先生によると、このルールが出来た江戸時代には、そばつゆは生醤油だったそうです。

 

 つまりこのルールは、蕎麦に塩を付けて食べる子供に、「付けすぎると辛いよ。」と教えてあげるのと同じようなルールだったんですね。弁護士の世界にも、こういった謎ルールはあります。弁護士になるには、司法修習という研修を受けます。弁護士の自己紹介では必ず、司法修習は「第何期です」と付け加えるのが「ルール」になっています。入隊以後の年月により偉さが違ってくるという意味で、昔の軍隊と同じです。内部のルールにとどめておくならまだしも、外部に対しても、「私は第何期です。」などと自己紹介している弁護士は沢山います。まあ、こんな感じの、「弁護士村」の謎ルールは、大して害にもならないでしょう。

 

 しかし、法の世界には、一般の人が知らない、法律にも書かれていない、「謎ルール」が沢山あるのです。司法修習では、裁判官の実務も体験させてもらいます。私が師事した刑事事件の裁判官は、ある事件の判決を、懲役1年にするか、10ヶ月にするかで悩んでいました。そこで私が、「それなら、11ヶ月にすれば良いのではないでしょうか?」と進言したんです。すると裁判官は、「そういう奇数月の判決はないから。」と教えてくれました。な、なに、その謎ルール。奇数月の懲役はダメだなんて、刑法のどこにも書いてないのに! 話は変わりますが、映画を見に行くと、「映画泥棒は犯罪です。」と、最初に必ず流れます。「10年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金、又はその両方が科されます。」なんて、脅すようなセリフが続きます。このセリフの中に、「もしくは」と「又は」と2種類の接続詞が使われています。普通の人は聞き流すでしょうけど、これって法律家の間では、ルールに基づいた言葉の使い方なんです。大分類で分けるときに使うのが「又は」で、大分類の中でさらに分けるときに使うのが「もしくは」となります。つまり、映画泥棒への罰則を、「①懲役 ②罰金 ③懲役・罰金の両方」と考えては間違いです。「1.一罪一刑罰の原則の場合①懲役 ②罰金 2.一罪複数刑罰という例外的場合①両方」というのが、法律を勉強した人の正しい理解となります。(正月早々、理屈っぽくて済みません。)

 

 しかしこれは、結論だけ見れば、罰則には3つの選択肢があるというだけの話です。「原則の場合」と「例外の場合」といった大分類なんか、一般人には何の意味もないでしょう。法律家だけに通用する「謎ルール」と言われてもしようがない気がします。なんてことを言いながら、私自身、同業者が「又は」と「もしくは」を正しく使っていないのを見ると、「プップ、間違ってやんの!」なんて思ってしまうのです。(おいおい。)令和の新しい時代には、法律家の「謎ルール」を、一般人の常識で見直す必要があると思うのでした。

 

弁護士より一言

 親として子供には、どこに行っても恥ずかしくない礼儀作法を教えたいと思います。例えば、「和室では畳の縁を踏まない。」みたいな作法です。しかし、我家の子供達に教えると、「それ謎ルール!」なんて、生意気な返答が来るのでムカッとするのです。ところで、子供の頃から茶道をしてる妻によると、一畳は六歩で歩くのが決まりで、それによって自然と美しい立ち居振る舞いになるそうです。「な、なにその謎ルール。」と、子供達同様、私も言いたくなったのでした。

                                        (2020年1月6日 大山 滋郎)

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