弁護士の孟母三遷

第262号 弁護士の孟母三遷

孔子と並ぶ中国の聖人、孟子です。例え話が得意な人です。「助長」の話なんか有名です。「助長」というのは、文字とおり「成長を助ける」という意味ですね。畑に種を蒔いたところ、芽がでてきましたが、どうも成長が遅い。そこで、成長を助けようと、芽を摘まんで無理やり引っ張り上げたところ、作物は全て枯れてしまったという話です。馬鹿なことをする人もいたものだと思う一方、「助長」したくなる人の気持ちも分かるのです。うちの次女は、赤ちゃんのときにハイハイが上手く出来ませんでした。「なんで?」と心配していたら、そのうち立って歩きだしたんです。そんなことを思い出して、先日娘に「今はもうハイハイできるよね?」と思わず聞きました。「そんな恥ずかしいことできるわけないでしょう!」と怒られちゃいました。孟子関連で一番有名なのは、「孟母三遷」の話です。孟子のお母さんは大変な教育ママだったようです。お墓の近くに住んでいたとき、孟子はお葬式のマネばかりしている。そこで市場に引越したら、今度は商人のマネばかりする。そこで、もう一度、今度は学校の側に引越したところ、孟子は勉強をするようになり、最後は偉い学者になったという話です。環境によって、人は大きく影響を受けるのだという話ですが、私自身これは絶対にその通りだと思います。現代でも、「お金持ちになりたければ、お金持ちと友達になれ。」と言います。勉強ができるようになりたければ、そういう人たちの側に行くことが大切です。よく、田舎の高校から、東大に行く人が一人でると、その後何人も続けていくようになるなんて話を聞きます。周りの影響で、「あいつが出来るなら、自分だって!」と思うと、本当にできてしまうんでしょうね。ことほど左様に、環境の力は大きいのです。

 

弁護士の仕事で言いますと、少年事件など特に周りの環境の重要さを感じます。悪い仲間から引き離さないと、更生は難しい。その様な環境準備のお手伝いをするのも弁護士の仕事です。少年院などに行くと、少し悪かった少年が、周りに影響を受けて、1人前のワルになって戻って来るなんて言われてます。周りの環境が大切だというのは、弁護士にも当てはまります。法律家になるには、司法試験に受かってから研修をします。その後、裁判官、検察官、弁護士とそれぞれの道に進みます。同じような教育を受けても、何年か経って会うと、裁判官はいかにも裁判官に、検察官はいかにも検察官らしくなっているのです。弁護士内部でも、こういうことは言えます。弁護士は、修習が終わると、通常どこかしらの法律事務所に勤めます。社会人経験は、その事務所だけなんて弁護士は沢山います。それだけに、勤務した法律事務所の影響を強く受けるのです。お客様にどのように接すればよいのかとか、信頼を得るためには何が重要かなどは、ロースクールでも司法修習でも教えてくれません。入った事務所で、見よう見まねで覚えていくしかないんです。弁護士会の仕事を熱心にやる事務所に加入した弁護士は、やはり同じようになります。そういう弁護士はまた、人権活動にも熱心な人が多いようです。

 

ところが、そういう弁護士でも、事務員さんや勤務弁護士の労働条件が劣悪だったり、依頼者に対して、お客様とも思わないような対応をすることもよくあります。悪しき「伝統」も引き継がれるようですか。弁護士も孟母三遷に倣って、良い事務所を探すことが大切かもしれません。私も事務所の若手を、「助長」しないよう気を付けながら、「顧客第一」の弁護士には育てていきたいと思うのです。

 

弁護士より一言

中学生の息子が、スキー合宿に行くのを怖がって、「遭難するかも!」なんてあほなことを言うので聞き流していたら、祖母(私の母ですね)から電話がありました。「嫌がっているんだから、風邪をひいたことにして、休ませたらどうなの?」な、なんなんだ! 私が子供の頃に、病気を理由にサボろうとしたら、凄い怒ったくせに。。。 孟母も、子供が三文安にならないように注意してたかもしれませんね。息子は「意外に楽しかったよ!」と元気に帰宅してきました。

                                        (2020年2月1日 大山 滋郎)

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