弁護士の資格

第286号 弁護士の資格

「大金持ちでも、必ずしも幸福ではない」なんて言う人がいます。間違いない正論ですが、その一方、「そういうセリフは、大金持ちという資格を得てから言ってくれ!」なんて、厳しいことを言う人も居ます。

「そ、そんなこと言われたら、良いことを何も言えなくなっちゃうよ」と思いながらも、これまた正論だなと、妙に納得してしまうのです。いずれにしても、何か言ったり行動したりするのに、「資格」が必要とされる場合が多くあるのは間違いないところでしょう。

「人は、『その本は読んだよ!』という資格を得るために読書をする」なんて、名言?がありました。他人のことはともかく、私は確かにそういうところあります。難しい本について、見栄をはって、「その本は読破してます!」と言いたくなっちゃうのです。(おいおい。。。) 弁護士の場合、こういう人多いんですね。「少し前に出た何々事件の高裁判決は、当然読まれていると思いますが?」なんて嫌なこと?言われたときに、胸を張って「もちろんそれは読んでますが、本件とは前提事実に違いがあって、」みたいに言うための「資格」を得る必要があるのです。ううう。。。

ただ、これといった問題意識もなく、「資格」を得るためだけに本や判決を読破しても、内容をほとんど理解していなかったなんて恥ずかしいこともよく起こります。「資格」なんか無くても、ポイントについて自分なりにしっかりと考えていた人の方が、よっぽど良い見解を持っていることは多々あります。いうまでもなく、弁護士は資格業といわれる職業の一つです。試験に合格し、1年間の研修を受けないと「資格」を得ることはできません。無資格で弁護士業務をすると、犯罪者になってしまいます。その一方、弁護士資格がなくても、問題なく出来る法律業務も沢山あります。それでも多くの人がなんとなく、弁護士という「資格」を持っている人の方が、あらゆる法律問題に関して、うまく対応できると誤解しているんですね。

 

しかし、実際問題として、企業で生じる法律問題なんて、企業内部で関連法を毎日見ている人たちの方が、資格だけ持っている弁護士より、よほどよく知っているんです。企業の法務部門の人の多くは、弁護士に、親切に関連法規まで教えてくれた上で、「質問」してくれます。それに対してコメントするときには、「単なる資格持ちという以上のものを提供しなくては!」と、相当緊張するのです。刑事事件で、被害者と示談交渉するには、基本的に弁護士という「資格」が必要です。でも、示談というのは、「加害者の反省」「お詫び」「示談金」という「商品」を売って、「許し」という対価を得る営業活動なんだと考えることもできます。

そうだとすると、弁護士の「資格」を持ってなくても、やり手のセールスマンなら、100倍も上手くセールス出来ると信じています。「資格」は有っても、「売る技術」が伴わない私のせいで、逃した示談もあったのではないかと、不安になるときがあるのです。

「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」なんて、有名な名セリフもありました。「優しさ」は人として生きていく上での「資格」なんですね。これは本当にその通りだと思います。

しかし、弱腰の交渉で不利な解決を受け入れてしまい、その後「優しく」依頼者を慰める弁護士なんて困ります。(そんな弁護士、居るのかよ!) お客様のために強くなければダメです。

「弁護士は、資格がなければ生きていけない。強くなければ依頼を受ける資格がない」ことを、忘れずにいたいと思ったのでした。

 

弁護士より一言

健康のために、山登りをしています。登るのは辛いですが、後から「ああ、その山なら登ったことがあるよ」と言えると思って頑張っているのです。5年前に富士山に登ったことなんか、いまだに自慢しています。エベレストの麓まで登るツアーがあるので、コロナが収束したら、参加しようと思っています。「エベレスト? もちろん登ったことがあるよ!」と言う資格を手に入れられるぞと、今から楽しみです。                                                   (2021年2月1日 大山 滋郎)

 

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