弁護士の平和
第319号 弁護士の平和
「女の平和」といえば、ギリシャの大喜劇作家、アリストパネスの代表作です。2400年ほど前の作品です。
アテネとスパルタとで、男たちが戦争を始めます。戦争を止めさせるために、両国の女性が集まり、セックス・ストライキを行うという喜劇です。最終的に両国の男たちが我慢できずに、戦争を終わらせるという話です。古代ギリシャの喜劇ではありますが、ロシアとウクライナの戦争でも、何とかして平和な世の中にしたいと考えている女性は沢山いるはずです。弁護士として刑事事件を多く担当してきましたが、暴行・傷害という暴力犯は、99%男性が犯人です。男の方が、暴力で解決するのが好きですし、戦争は男が始めるものなのも確かだと思います。もっとも、女性の方が、ストライキしてまで平和を望んでいるのかというと、これまた何とも言えません。テレビでインタビューされていたロシアの女性は、「ロシアが絶対に正しい。プーチンを支持する!」と意気盛んに話していました。ううう。。。
一般的に「ストライキ」といえば、労働者が自分たちの主張を通すために行うものですね。私が子供のころには、国鉄(懐かしいですね)が、年間行事みたいにストライキしていました。今の感覚からすると、「一体何がしたかったんだろう?」と不思議に思ってしまいます。
ただ、ストライキというのは、自分たちの主張を通すために非常に有効な手段であることは間違いないですね。ロシアとウクライナの労働者も、平和のためにストライキをしてくれたらいいのにと思いますが、そう簡単にはいかないようです。労働者の労働運動が盛んだった20世紀初頭には、「戦争は権力者である資本家の利益のために起こる。だから、各国の労働者が協力してストライキを行うことで、戦争を阻止できる」なんて期待されていました。
ところが第1次世界大戦が始まってみると、労働者階級の方が「愛国者」になってしまったなんて話もありました。ストライキといえば、「国鉄」だけでなく、私が若い頃は訳の分からないのが色々あったように思います。
私が大学生の頃には、「米日帝国主義粉砕のための、授業ストライキ」なんて、大真面目にやっていました。これに対して当時の私は、「言うこと聞いてくれないなら、勉強なんかしてやらないからな!」という子供並みの発想だなと呆れる一方、「授業さぼれてラッキー」と感じていたのです。(い、意識低すぎやろ!) 医師のストライキなんていうのもありました。当時の医師会会長の、「その日に病気になった人は運が悪いと思え」みたいな発言があったはずです。考えてみますと、昭和はかなり野蛮な時代だったようです。
ただ、医師のストライキに代表されるように、ストというのは、やられると困る人がするから、迫力があることは間違いないところでしょう。今の日本では、警察や消防などのストライキは法律で禁止されています。「その日に火事になった家は運が悪い」で済ますわけにはいきませんから、やむを得ないところでしょう。それだけ、社会にとって大切な仕事なんですね。ということで、弁護士についてです。
弁護士の仕事が、本当に大切なものなら、ストライキをすることで、国民や政府に強い影響を与えるはずです。そこで、たとえば「平和運動」を推し進めるために、弁護士がストライキをするとどうなるか考えてみました。誰も困らないのなら、ほとんど迫力がないです。確かに、不当に逮捕されて、すぐに弁護士の助けを必要としている人など困ります。
その一方、弁護士の仕事は大部分を占める民事事件の場合は、今すぐ対応しないといけないようなことは、それほどありません。民事裁判など、長期間かかって大変であることは間違いないのですが、裁判期日は1-2か月に1回あるだけですから、数日ストライキしても、ほとんど影響なさそうです。「弁護士のストのお陰で、戦争が終結した」と言われるくらい、社会に必要な存在となりたいものです。
弁護士より一言
私は、その日に履く靴下が見つからないで、しょっちゅう大騒ぎしていました。(不思議なことに、妻にいうと、すぐに引き出しから出てきます。)見かねた娘が、同じ靴下を20足プレゼントしてくれました。これなら、直ぐに見つかるだけでなく、どの靴下を履いても左右が合うということです。「ば、馬鹿にするな!」と憤慨しましたが、それ以降、家庭に平和が訪れています。。。 (2022年6月16日 大山滋郎)