下流弁護士(2)

第351号 下流弁護士(2)

前回は「下流」に関連して、40年前のベストセラー金魂巻を取り上げました。そこでは○金の子供が○金になる、「○金相乗効果の法則」なんて、怖い法則があったのです。この本の中には、他にも恐ろしい法則がありました。

 

それは、「収入と主張反比例の法則」とでもいうものです。○ビの人ほど色々と主張する一方、○金の人は黙っているんだそうです。「金持ち喧嘩せず」なんて言葉もありますが、確かにそんな気もします。弁護士でも収入が上がるに従い、「人権」「反権力」なんて言わなくなるみたいです。(おいおい) しかし考えてみますと、この「法則」は色々と応用が利きそうです。建築会社の人から聞いたのですが、低価格の家を建てる人ほど、クレームが多いそうです。「夜中に呼びつけられましたよ!」なんて憤慨してました。

 

これに対して、高価な豪邸を建てる人ほど、一切文句を言わないそうです。レストランでも、安い店ほどクレームを付ける客が多いと聞いたことがあります。弁護士の仕事でも、高い費用を負担する私選弁護の依頼者より、国選弁護の方が弁護士に様々な要求して来るように思います。「下流」の話に戻りますと、この言葉は私の愛読書の論語でも2回使われています。1つは、「人格者である君子でも、他人を憎むことがあるのか?」という質問に対する回答の中に出てきます。君子が憎む人の1つに、「下流に居ながら、上の人の悪口を言う者を憎む」というのがありました。この場合の「下流」は、文字通り貧乏だったり、社会的立場が低かったりする人達です。こんなこと言うから、孔子は封建的だと批判されてきました。しかし考えてみると、先ほどの「収入と主張反比例の法則」じゃないですが、下の立場に居続けている人ほど、上にいる人の悪口を言いますね。自分自身は上には行けないと分かっているので、心置きなく悪口を言えるんでしょう。万年野党の人たちが、総理大臣を口汚く批判するようなものです。労働事件なんかでも、上司や経営者をメチャクチャ悪く言う人います。別に私はそういう人たちを憎みはしませんが、ちょっと困った人かもしれないと思うのです。論語に出て来るもう一つの「下流」ですが、「君子は下流に身を置いてはいけない」のだそうです。ここでいう「下流」というのは、貧しいといったことではなくて、「人の非難を受ける立場」という意味だそうです。ひとたび下流に身を置くことになると、全ての悪評が集まって来ます。論語の中では例として、暴君といわれた王様を上げています。この人は、残虐なことをして国を亡ぼしたと悪名高いんですが、「下流」に身を置いたから、色々な悪事について全てその人のせいにされたというのが論語の見解です。実際現代の評価では、この王様それなりに優れた人だったそうです。

 

こういうことは、現代でも起こります。ビッグモーターなんて、保険金の不正請求により、「下流」に落とされました。身から出た錆だというのは間違いないところです。しかし、あれだけ伸びていた企業ですから良いところも沢山あったはずです。行き過ぎがあったにしろ、店舗の周りの雑草をとるのは、悪いことではないでしょう。しかし、ひとたび「下流」に落ちると、「除草剤で樹木を枯らしていた犯罪会社」みたいに言われてしまう。本当に怖い。ジャニーズの性加害問題でも、同じようなことはあります。確かにジャニーズの件は悪質な犯罪と言わざるを得ないですが、これまでヨイショしていた人たちが、急に手のひら返しで、我先にと批判し始めた変わり身の早さを見ては、さすがに良い気はしません。

 

そう言えば、論語の中の、「君子が憎む人」の例として、こんなのもありました。「他人を攻撃することで、正義の味方になったと思っている人を、君子は憎む」そうです。相手が落ち目になったら、「ご注進ご注進!」と、昔のことをあげつらう人って本当にいるんですね。こういう人、弁護士にも沢山います。わ、私も気を付けます。

 

弁護士より一言

○金と同じように、外見にもイケメンの○イがありそうです。眼瞼下垂の手術をしたことは以前こちらで書きました。手術の直前に女性の執刀医から「何か希望はありますか?」と聞かれたので、「イケメンにしてください!」と答えました。すると「自然な形にしますね」と返されたんです。こ、これって、「元々が○イだから、自然にすれば十分だ」という意味ですよね。。。                                                                                                     (2023年10月16日  大山滋郎)

 

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