弁護士の阿弥陀池

第356号 弁護士の阿弥陀池

お正月気分で好きな落語を紹介します。バカバカしい話が好きです。「阿弥陀が池」という名前の池があるんですが、その池の名前を使ったダジャレの話です。悪事が露見して、「誰にそそのかされたのか?」と聞かれた男が、「阿弥陀が行けといいました」と答えるというのが、話の主軸なんです。私の文章を読んでも、「このおやじギャグのどこが笑えるんだ?」と思われるでしょうが、私は桂枝雀の高座で2回聞き、2回とも爆笑しました。「落語は何を聴くかではなく、誰を聞くかだ」というのは本当です。正月早々、無理やり考えてみますと、「阿弥陀が行けと言いました」というのは、キリスト教の「全て神の御心のままに」みたいで、とても良いのです。刑事裁判でも、背後関係を追及されることはよくあります。共犯者たちが、自分が助かろうとして、お互いに相手が主犯だということはよくあります。自分は、強く言われてやむを得ず加わったというのですね。裁判官から、「誰に言われてやったのか?」と聞かれたら、罪を他人に着せようとしないで、「阿弥陀が行けと言いました」と答えた方がましな気もします。落語好きな判事なら、刑を心持ち軽くしてくれるかもしれません。 落語には、知ったかぶりする人の話もよくあります。「酢豆腐」なんて好きでした。知ったかぶりをする若旦那に、腐って酸っぱくなった豆腐を「舶来物です」と騙して食べさせる話です。若旦那は、「これは酢豆腐というもので、西洋では上物です」と知ったかぶりをして、腐った豆腐を食べてしまう。この落語は本当に耳が痛い。実は私も、「知らない」とは言えない人間です。若い頃、青カビのチーズを初めて食べたとき、「これは美味しい!」と、心にもないことを言ってました。

そう言えば少し前に、防腐剤を使わないマフィンが腐っていたという事件がありました。このお店は相当叩かれて廃業になったそうです。私のところに持ってきたら、「これは酢マフィンですね」と言って食べてたかもしれません。落語に戻ると、人情噺も好きでした。「子別れ」なんて良いですよね。浮気者で遊び人の夫に愛想をつかした奥さんが、子供を連れて離婚します。その後、心を入れ替えた男が、母子家庭で苦労して育っている息子に会ったことから、家族が再生する話です。冷静に考えると、「男にとって都合の良い噺だな」と思います。

でも、上手い噺家さんで聞くと、そんな理屈はどこかに行ってしまい、感動できるのです。古典落語には、そのまま現代の話に出来るものもあるようです。「お見立て」は、𠮷原で客が花魁を選ぶ(見立てる)話です。現代のキャバクラでも、嫌われる客はいるそうです。そういう客ほど、「こんな所で働いてたら、嫌な客も来るだろう」みたいなことを言うと、ネットにかいてありました。花魁がそんな客から逃げるため、病気が悪化してあの世に行ったなんて嘘をつく。それを聞いた客は、どうしてもお墓参りをすると言うんです。無理やり案内させた墓地で、「どれが花魁の墓か?」と客に聞かれ、答えに窮した店の者が、「好きな墓をお見立て願います」というのが落ちになります。うちの事務所でもマネをして、「お好きな弁護士をお見立て願います」とお客様に選んで貰えば面白いかも。。。

最後に紹介するのは「たばこの火」です。貧乏そうな客が、次から次と注文します。たまりかねた店主がお願いして、途中で支払ってもらう。実はこの客は大金持ちで、最後まで我慢して、何も言わずに待っていれば10倍にして払って貰えたと、店主は後から知ります。そこで、次回その客が店に来たときに、店主は「何でもお申し付けください!」なんて言う。それに対して客が、「それじゃあ、たばこの火をお願いしようか」と答える話です。子供のときは、欲張りの店主を愚かに感じたものです。自分で事務所経営始めると、まずは債権回収したいと思う主人の気持ちがよく分かります。人を試すような客に、かえって反感を覚えたのでした。

 

弁護士より一言

子供の頃から落語が好きでした。寿限無みたいな話は暗記して、重ねた座布団の上で皆に聞かせていたものです。妻は私の遠い親戚なんですが、子供の頃に「落語好きのじろうくんという男の子がいるんだって」と、私のことを聞いていたそうです。たまに妻から、「落語してよ」と言われますが、大人になって身の程をしると、そんな恥ずかしいことはできないのです。                                                                                                                     (2024年1月1日 大山 滋郎)

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