弁護士の闇の左手

第362号 弁護士の闇の左手

「闇の左手」は、50年以上前に、ル・グィンという女性作家(「ゲド戦記」の作者です)によって書かれた宇宙が舞台のSF小説です。そこでは遺伝子操作によって、男女の区別のない、両性具有の人類が生まれてきます。発情期には、相手との関係で男性になったり女性になったりして、子供を作っていくという社会を描いたSFです。

当時から高く評価されていましたが、男女平等、ジェンダーフリーが強く言われている現代を先取りしたような凄い小説なのです。男女平等は、法律の世界でも大きな問題となってました。少し前まで、男性より女性の方が定年の年齢が5年も早いみたいな、露骨な男女差別がありました。「仕事ができない男性でも、有能な女性より沢山の報酬が貰えて当たり前だ、男は家族を養うんだから!」みたいなことを、経営者が平気で言っていた時代がほんの少し前にあったのです。こういった露骨な差別が、法律改正や裁判を通して直されていったのが、戦後の男女平等の流れでした。これは日本だけの話ではなく、アメリカでもそうでした。連邦最高裁で二人目の女性裁判官になったギンズバーグ判事という人がいたのですが、この人は男女差別撤廃の戦士として有名です。他の男性裁判官相手に性差別の問題を「幼稚園の先生」のように説明しなければならなかったなんて話していました。わ、私も耳が痛いです。

しかし、法的な差別が改善されても、男女の不平等は依然残ったままでした。男の方が平均年収は明らかに高いですし、政治の世界でも男性がほとんどを占めています。この原因ですが、男性の「暴力」「権力」「財力」志向が根本にあるのだそうです。それが悪い方に行くと、犯罪になるとのことです。私も弁護士になって、多くの刑事事件を手掛ける中で、「犯罪というのは、ほとんど男がやるものなんだな」と実感したものです。その一方、「暴力」「権力」「財力」を上手く手に入れるのも男性です。確かに考えてみますと、世界の権力者や大富豪のほとんどは男性です。「女性が男性と平等に扱われるには、女性が意思決定者にならなくてはならない」とギンズバーグ判事は指摘していました。しかし、男性の方が権力志向が強い中で、それを実現するのは非常に難しい。

というわけで、「闇の左手」の出番です。遺伝子操作で性別のない人間が生まれてくるなら、確かに男女差別の問題は解決できそうです。もっとも闇の左手の世界では、発情期には男女に分かれることになっています。そこで「女性」になった人がいろいろと苦労するようだと、新たな男女差別が起こりそうです。「自分で女性になったんだから文句を言うな」みたいな議論ですと、「悪しき自己責任論」だと非難されそうです。

この点の解決として、筒井康隆の小説がありました。男性が妊娠する話です。感激した男性が、「君も触ってみろ」と、自分の部下にお腹を触らせたりします。確かに現状意思決定者である男性が妊娠するようになれば、妊婦や幼児にやさしい社会になりそうです。妊娠・出産・子育てに関連しての男女差別の問題は解決できそうですが、その一方で妊娠関係以外での男女の不平等は残りそうです。この点も解決するとなると、思い切って子供は人工的に作るようにした上で、「闇の左手」みたいに、両性具有の人だけにしてしまうことが考えられます。

しかし、これは「男女の違いを無くす」というものであり、「男女平等」とは違いますよね。男女の別を保持したまま問題を解決するには、別の遺伝子操作が必要となります。男女不平等の根本原因が男性の「暴力」「権力」「財力」好きにあるのならば、この点を修正する必要がありそうです。そこで、遺伝子操作によって、女性の「暴力」「権力」「財力」志向を男性と同じ程度の高めるというのはどうでしょう? これならば、政治や経済の世界で活躍する女性も間違いなく増えるはずです。もっとも、そうなりますと女性の犯罪者も男性並みに増えちゃいそうですが。。。

 

弁護士より一言

東海道五十七次に続き、今年は中山道にチャレンジしています。最初は各宿場の名所をゆっくり見物しようなんて考えてました。しかし始めてみると、宿場の一覧表で、歩いたところに印を付けるのが一番の楽しみになったのです。一覧表を埋めるのが目的になるのは男性の特色のようです。「ただ歩くだけでどこも見物しないなんてありえない」と妻には言われています。                                                                                                                   (2024年4月1日   大山滋郎)

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